2023/12/18

ねじまき鳥クロニクル

 ちょっと前の話。唐突な話で恐縮だが、村上春樹の小説の中で一番好きな作品は『ねじまき鳥クロニクル』である。

 これは、学生時代に読んで衝撃を受けた。それまで村上春樹小説は全部読んでいたのだが、1・2巻(第1部&第2部)が始めに出て、それを読んだ時の感想は、「残念ながら、村上春樹は終わったな。。。」という感じだった。その2巻で完結していたと思ったら、半年くらいして突如3巻目(第3部)が出て、それを読み終えたとき、感動し過ぎて、京都の下宿を出れなくなってしまい3日くらい茫然として過ごした記憶がある。それくらい、個人的に琴線に触れた作品だった訳だ。

 と、この話をし出すと長くなるので割愛するが、その『ねじまき鳥クロニクル』が舞台化されたのが3年前。コロナで公演が中断してしまい、その再演が11月にスタートした。ずっと気になっていたのだが、なかなか時間が取れずに諦めかけていた折、たまたま近くの仕事がキャンセルになったタイミングで、東京芸術劇場に馳せ参じた。ダメ元だったが、残り2席(多分)で滑り込んだ。

 いや、あまりの素晴らしさに、驚嘆&感動の嵐。50歳を過ぎると、色んなことに触れても感動しなくなってきているのだが、、、いや、素晴らしかったです。まさに身体性というものをダイレクトに感じられる劇。演出・振付(インバル・ピント&アミール・クリガ―)、そして舞台美術は圧巻。そして、大友良英トリオが生で演奏しているのが(これ、恥ずかしながら、劇場に行くまで知らなかったけど!ライブ演奏とは、イヤハヤ。)、劇の良さを別次元に押し上げている。と、感じ入る。

 最近“AIの裏をどうかくか?”といいうことを、ずっと、漠然と考えているのだが、「こういうことか!」とひとりで納得。現在進行形で『街とその不確かな壁』を、非常に遅ればせ読んでいる身にとっては感慨もひとしお、でありました。(TM)