2018/12/31

Look Back 2018 ゆく年来る年

さて今年も関西に帰っての大晦日、元旦を迎える。
まったく個人的なマイニュース2018を最後に振り返ってみる。
今年もいろいろ盛りだくさんな1年だった。みなさん、ありがとうございました。
マイ・ニュース、ベスト3をあげるとこんな感じ。

1.長女練馬区美術館で絵が展示される、長男自転車に乗り出す
2.事務所スタッフとして新たにトモが入る
3.拙著『建築家の自邸に学ぶ設計製図』(発行:彰国社)が無事出版

以上です。
みなさん、よいお年を。新年は7日からスタートします。(TM)

2018/12/30

Look Back 2018 その2

 昨日に引き続き、全く個人的なマイ・ベスト2018。今日は音楽編。今年も音楽メディアの購入は例年に比べて比較的少なめ。理由は昨年同様はっきりしていて、アナログレコードの置場が家になくなってきて、なかなかドッチャリと購入できなくなってきた、という物理的な課題があるのです。相変わらずアナログレコードとCDを並行して購入しているが、世間はもうデータ配信が主流になっており、いい音楽をデータでないと聴けなくなってきている気がして(そうでもないかな?。。。)いるが、まあそこの所はどうしようもない。

 ということで。、2018年のマイ・ベストを選んでみる。
順番はこんな感じ。
 1位:『Boarding House Reach/ Jack White
 2位:『The Music In My Head/ Michael Franks
 3位:『Negro Swan/ Blood Orange
 4位:『Be The Cowboy/ Mitski
 5位:『Lamp It Prose/ Dirty Projectors

 今年は、もう圧倒的にジャック・ホワイトの新譜が最高だった。このブログの2018/4/12でも書いたが、ある意味クレイジーなベクトルに振り切れながら、古典的(いい意味での)でミニマルなロックに根差した大傑作となっている。王道のロックスターがいなくなってきた昨今、ジャック・ホワイトがついにこの境地に辿り着きつつある、と思わせる大傑作。2位は何とマイケル・フランクスに!まだ、新譜を出すのか?!という感じだが、これが凄い。何が凄いかというと、まったく変わらないという凄みが半端ない。一時、このアルバムばっかり聴いていた。3位はブラッド・オレンジに。ブラック・ミュージックの現在形を力強く美しく繊細に表現した力作だと思う。ジャケットも秀逸。4位はミツキの新作に。さまざまな媒体で今年ベストに挙げられている話題作だが、前作と比べても一段階進化したような気がする。今後の行く末がおそろしい(いい意味で言ってます。もちろん。)。5位にはいろいろ迷ったが、ダーティ・プロジェクターズに。音オタク的なつくりだと思うが、メロディーの美しさやポップさは、普遍的なものがあり素晴らしい佳作。
 ここには挙げなかったが、コロンビアレコードの女性ヴォーカルもののコンピレーション(『コロンビア・グルーヴィー・ソングバーズ』監修:長門芳郎)が素晴らしくて、最近ずっと聴いている。後、ホセ・ジェームスのビル・ウィザースのトリビュート盤(その名もずばり『リーン・オン・ミー』)もヘビー・ローテンション中。後、The1975の新譜『ネット上の人間関係についての簡単な調査』(相変わらずタイトルが特徴的)もカッコいい(チープは表現ですみません!)。、という感じ。
 さて、そんなこんなで2018年もたくさんのいい音楽に出会えた。さて、2019年はどんな音楽に出会えるでしょうか!(TM)

2018/12/29

Look Back 2018 その1

 2018年もいよいよラストです。と、いうわけで例年、誰に頼まれる訳でもなく勝手にやってますが、全く個人的なマイ・ベスト2018を振り返り。
 で、今日は映画編。
 映画はまず映画館のスクリーンで観るべし、という主義。若いころ(学生時代)は本当にやることがなかったので、映画館に入り浸っていましたが、さすがにもうそんなに行く時間はなくなってしまっている。そんな中で厳選して観ているような感じと、いいながら何やかんやでおおよそ25本鑑賞した次第。今年のマイ・ベスト5はこんな感じ。
 1位『ワンダーストラック』/トッド・ヘインズ
 2位『ビューティフル・デイ』/リン・ランジー
 3位『ザ・アウトロー』/クリスチャン・グーデガスト
 4位『デッドプール2』/デヴィッド・リーチ
 5位『スリー・ビルボード』/マーティン・マクドナー
    『30年後の同窓会』/リチャード・リンクレイター
 1位は『ワンダーストラック』にした。それ程話題にならなかったような気がするし、トッド・ヘインズのコアなファンはあまり好きじゃない作品かもしれないが、映画全体のルックが非常に建築的(空間的)であり、途中で観ていて恍惚としてしまう程だった。色彩や音声などのズレが融合していく様はまさに映画然とした超力作だと思う。
 2位は『ビューティフル・デイ』。現代版『タクシー・ドライバー』という感じだが、ヒリヒリとする感覚の中に、絶妙なユーモア感がちりばめられた良作。何といってもホアキン・フェニックスの存在感とジョニー・グリーンウッドの音楽がいい。
 3位は『ザ・アウトロー』。正直あまり期待せずに(ほとんど全く話題にのぼらなかったし)B級アクション映画という枠組みで観てみたら、これが予想を覆しすごかった。アクション&クライム・サスペンスのリアリティの表現ということと、クライマックスの映画是全体の転換(これは賛否両極論あると思うが、僕は好き)の演出はすごい作品だ。
 4位はご存知『デッドプール2』。個人的には1作目に続きツボに入っているのでしょうがない。まさにライアン・レイノルズの涙無くしては観れない自伝映画(?)になっている。劇中のa-ha『テイク・オン・ミー』が流れるシーンで不覚ながら号泣。いや、a-haで泣かされるとは!
 5位『スリー・ビルボード』は非のうちどころがない文句なしの秀作。あえて言えば、非の打ち所がないところが、玉に瑕か(!)。『30年後の同窓会』も良かった。地味なせいか、リチャード・リンクレイター作品なのに東京上映がわずか数館なのは寂しかったが、俳優陣を含め映画のクオリティは素晴らしかった。
 この他、『ファントム・スレッド』(ポール・トーマス・アンダーソン)、『シェイプ・オブ・ウォーター』(ギレルモ・デルトロ)(アカデミー作品賞)、話題沸騰の『カメラを止めるな』、など選外にしたが、見応え充分だった。。
 という感じで、来年もいい映画に巡り合いたいですね。
 明日は音楽編、いきますよ。(TM)

2018/12/19

設計演習講評会2018ラスト

  武蔵野大学3年生、設計演習最終課題の講評会。武蔵野大学は4年生に設計演習の授業がないので、これが授業としてはラストの設計課題となり、後は卒業設計を残すのみとなる。
 3年生後期は僕も含めて5名の建築家によるスタジオ制(各建築家により異なる課題を出して、少人数のスタジオのようなかたちでおこなわれる設計演習)での設計演習のかたちをとっており、他のスタジオの課題が見られるのはこの講評会だけなので、教員としても楽しみである。個人的には年末のバタバタで体力は限界ながら、何とか気合で講評会に臨んだ次第である。
 水谷スタジオの2018年度課題は(例年とそれ程変化なく)『武蔵野市現代美術館』。敷地はかつてバウスシアターが存在していたサイト。丁度今週アップリンクの吉祥寺がオープンするので、ある意味タイムリーといえばタイムリーな課題。
 水谷スタジオは4名が発表。
  ・地形をつくり、その形状に合わせながらアーティスト工房自体を展示する美術館
  ・近隣の商業施設を読み解き、施設全体をカフェでつなぐ美術館
  ・映像展示の場(暗)と周辺そのものを鑑賞する場(明)で形成される環境体感美術館。
  ・展示機能と宿泊機能が運営時間により可変しながら連続していく美術館
と、いう具合にそれぞれに魅力的な提案を完成させた。学生のみんなは本当にお疲れさまでした。
 講評会は13時過ぎから始まり、先生方の非常な熱心な指導及び講評があり、20時くらいに終了。長丁場になるので、さすがにこっちも身も心もしびれてくる。終了後、毎年恒例の懇親会へ。そこでは、一様に課題から解放されて、充実感と虚脱感を漂わせている学生たちの様子をみて、こちらもそこはかとなく静かに充実した達成感を感じることになる。
 例年そうだが、これが僕にとっての年内ほぼほぼ最後の学内のメインイベント。後は、新4年生の研究室配属の面接を残すのみ。さていよいよ年末に突入するのであります。満身創痍(とは、ちと言いすぎか?!)になりながら、じっくりいきますよ(笑)。(TM)

2018/12/17

発電所美術館

 所用で富山方面に出向き、ちょっと(大きく?)回り道をして、下山芸術の森発電所美術館へ赴く。「アーツ前橋」がリノベーション関連でいろいろな雑誌等で紹介される際、この施設が別ページで紹介されているのを何度か見かけたので非常に気になっていた、ということと、現在携わっているある規模のリノベーション・プロジェクトの参考事例として見ておきたい、と考えていた次第である。それにしても、予想通り、遠かった。最寄りの鉄道の入善駅から公共交通機関がほとんどないので、時間設定に非常に気を使わざるをえない。
 さて、この美術館はその館名の表す通り、元々発電所だった場所を美術館としてコンバージョンした、という非常に特殊な施設である。館では今は『木藤純子-ふゆにさくはな』展を開催中。展示場所の特性にあわせて作品をつくる、という作家の特徴にまさに適合した建築と展示作品の関係性ができあがっているといえるだろう。また、作品サイドからみると、作品の時間による変化のプロセスを表現に盛り込んでいる点や、ささやかで抑制がとれた作家の作風、ということも建築と一体となって表現できている、と感じた。それが、この地理的な特性も相まって空間全体の特別性をうみだしている。個人的には、建築のリノベーションの手法は、非常に参考になった。
 富山の市内では、富山県美術館も観る。丁度、『三沢厚彦』展を盛大に開催していて、発電所美術館とのいい意味でのギャップを堪能する。現代アートで、寒さも厳しくなってきた富山を堪能するのでありました。(TM)

2018/11/29

Uncertain Times の夜

 久しぶりに渋谷のオーチャード・ホールにコンサートを観に赴く。
 話は少しずれるが、最近は何事においても、キャッチ―で見栄えがして(インスタ映えして)シンプルで分かり易いものが、「良し」とされる空気感が満々だが、どうも、「なんだかなぁ。。」と思ってしまう今日この頃。
 そんなこともふまえ、このコンサートは凄まじい(もちろん良い意味で)衝撃だった。バンド編成は3人のドラム(!)を最前線にセッティングしている時点で既に破格だし、複雑かつ多様なリズムとメロディーをもつ楽曲群を、「どうやったらバンドでこの演奏が可能なんだ?」と思わせる演奏技巧で表現していく様子は、もう圧巻というしかない。
 はっきり言って、一般的にはあまり理解されないであろうというレベルの難解な曲の連続。しかし、そこに確実に存在する圧倒的な素晴らしさを感じることができる、という身体性からくる享受。それらの相反する様相があいまって、観る側は恍惚とした境地に導かれていくのである。
 演奏される曲はほぼ6070年代につくられたものだが、それらが高密度に現在(或いは次世代)の音楽のかたちへとアップ・デートされており、その事実がまた見る側に新鮮な驚きと、確実に感動を与えている。
 コンサートは2部構成でセットされ、2時間40分超えのボリューム(これがまた凄まじい)。この日のアンコールでは70年代半ばの珠玉の名曲『Starless』で締めくくられた。ちなみに、今日が来日公演3日目だが、セットリストが毎日変幻自在に変わっているらしく、最早予測不能の模様。観客もほぼ50代、60代の年齢層、しかも95%くらいが男(ので女子トイレが空いているという他では見られない状況)、という会場の様子も、コンサートの特異性を助長させている。
 かつて、「ビートルズの『アビー・ロード』をチャート1位から蹴落とした」と世間にPRされたバンドは、50年経った現在においても、さらなる進化と冒険を継続していた。
 バンドを結成以来ずっと牽引するのは、奇才、ロバート・フリップ。
 プログレッシブ・ロックというジャンルをロック史に確立したバンド。
 その名も、「キング・クリムゾン」。(TM)

2018/11/14

トロールの森2018

杉並区の善福寺公園で開催されている屋外アート展『トロールの森2018』に作品を出展しています。作品名は「Third Stage」。公園内に出現した3つの棺桶、といった感じの作品ですので、早くも問題作としてみなされている感が半端ありません(いい意味でとらえております、はい。)。
 非常に明快で怖くて楽しい(空間?)体感をしていただける品になっていますので、是非、お近くにお越しの際はご来場ください。
 会期は2018/11/3から23日まで開催しています。入場無料ですので、お気軽にどうぞ。
 写真は「まちなかプロジェクト」へ参加した企画『百鬼夜行@西荻』のパフォーマンスの様子。毎週日曜祝日に出現しますので、そちらもお楽しみください。(TM)

2018/11/10

『僕らはもっと繊細だった。』展

 リー・キットの『僕らはもっと繊細だった。』展を観に原美術館へ。日本では初の個展ということだが、その初めてということに加えて会場が原美術館、というところが素晴らしい。
 だいたいの現代アートの展覧会では、作品の解説がどこかについて回る、というのが常だと思うのだが(現代アートは難解なので)、今回はそんな解説もほぼなし。
 ので、作品に観覧車が直に向き合う、ということが求められる、という点が静かな刺激を受ける。作品の展示には自然光と作品の一部であるプロジェクターの光のみを使っている(通常のスポットライト照明は使用していない)ように見受けたので、そんな展示環境も相まって、作品としてのダイレクトな存在感と、その直接性が生む抽象性というものが、頭を含めた身体をグルグルと駆け巡り、非常に難易度(或いは、多義性と言ってもいいかもしれない)を感じずにはおられず、それがまたビンビンに心地よい。
 あらためて、芸術の秋なんだなぁ、と品川の地で多幸感に浸るのでありました。(TM)

2018/11/09

『一畳敷』展

 ICUのキャンパス内にある博物館、湯浅八郎記念館で開催中の『ICUに残る一畳敷』を観にいく。松浦武四郎生誕二百年を記念する展覧会という位置づけだが、展覧会の白眉は何と言っても、キャンパス内に現存する『一畳敷』の建物を、1/1で再現したレプリカ(?というか、もうこの大きさになれば建築、と表現するしかない)を展示しているところ。ただのレプリカに過ぎないじゃないか、と言われればそれまでなのだが、やはり原寸大の空間を構築しているところは非常に意義深い、と感じずにはいわれない。
 ちなみにこの『一畳敷』は、松浦武四郎が日本各地の霊社名刹の建築物に使われていた古木材を90以上も採集してしつらえられたもので、いわば究極の「俺様キッチュハウス」といえる。
 という訳で、こんな特殊な建築をめぐって、現在は本物の『一畳敷』と、そのゴーストであるレプリカの『一畳敷』、が同時に共存している、という事実は、何となくロマンをかきたてられる。そんな秋のピリッと効いた展覧会でありました。(TM)

2018/11/01

課題:レッド・ツェッペリンの家

 少し前の話になってしまったが、武蔵野大学3年生の後期、設計演習(授業名:設計製図4の第1課題の講評会を開催。この授業は、僕を含め5名の建築家の先生と一緒に運営する、スタジオ制の設計演習。水谷スタジオでは例年、第1課題ではスーパースター(ロック・アーティスト)の家シリーズの課題を提示する。もうこれも14年目に突入。非常にコンセプチャルな課題で、学生にとっては非常に難しいと思うけど、頭をグルングルンさせ普段とはまったくちがう脳味噌の使い方をして思い切り頑張って欲しい、と例年思っている。今年度は結成50周年ということで、王道中の王道「レッド・ツェッペリン」をついに投下。個人的には一家に一枚ツェッペリン、くらいの超メジャーな課題ネタと思っているが、意外、というか、当たり前のように学生世代の人たちにとっては、全く未知の存在のようで、いささかズッコケ気味で授業に臨む。約3週間の短いスパンだが、履修者10名が課題に取り組み、1010様のそれぞれ面白い提案が完成した。
 基本的に正解(らしきものも含む)がない課題なので、学生も困惑するが、講評する教員もいつもと違う所に頭をもっていかなければいけないので、講評会はいろいろな先生方の意見が聞けて、こちらとしても面白い。さまざまな技術や技能がどんどん展開していくこの世の中なのだが、最後は手描きのスケッチや絵が、まあまあパワーを持つということを今年も感じさせられて(もちろん、これは良いと思っている訳だけど)こういうのも大切だよね、と、完全に自己満足(及び、自己弁護(!))しながら講評も無事に終了。
 さて、課題全文を下記に流します。講評会の翌週は恒例の第1課題の打ち上げ&第2課題決起会@吉祥寺ハモニカ横丁。若干、パワー不足の学生も見られたが、学生諸君には第2課題も健闘を期待します。(TM)

■課題:「Led Zeppelin のいえ」
 「スーパースターの家」シリーズの第14弾の課題は、ロック史上にナンバーワン・グループとしてその名を残す「レッド・ツェッペリン」である。レッド・ツェッペリンがデビューしたのは1968年の10月である。ビートルズ、ストーンズにと並ぶビッグ・バンドとしての地位を築く訳だが、デビューは華々しいものでは無かった。しかし、ロック史上においてみると、デビューアルバム『レッド・ツェッペリンⅠ』は衝撃であり、当時停滞期にあったハード・ロック・シーンをツェッペリンはこの1枚によって生き返らせることになる。一般的なイメージではツェッペリン=ハード・ロックというイメージだが、サード・アルバムから音楽的な思考は多様で重層的な要素を孕み出し、アルバムを重ねる毎にまさに混とんとした音の塊のような音楽を展開していく。今年バンド結成50周年ということで、音楽界でもさまざまな特集や企画が催されている。
 メンバーは、ジミー・ペイジ(g) 、ロバート・プラント(vo)、ジョン・ボーナム(ds)、ジョン・ポール・ジョーンズ(b)の黄金の4人。衝撃のデヴュ-作を含め、ほとんど全てのアルバムがロック史上に残る名盤に数えられるのが特徴。ファーストに続く『レッド・ツェッペリンⅡ』(69)は「アビイ・ロード」を蹴落としてチャート1位になった大出世作であり、『レッド・ツェッペリンⅡ』(70)は「ロック=リフ」という方程式を世界に示した作品、4作目[1](71)は『天国への階段』をはじめロックの新たな方向性を示した大作、5作目の『聖なる館』(73)はその4作目までの集大成的作品、74年に彼らが設立したスワン・ソング・レコードからの第1弾『フィジカル・グラフィティ』(75) はロック史上最強の2枚組の一つにあげられる1枚、7作目の『プレゼンス』(76)は後期ツェッペリンの最高傑作と評される傑作である。
 その後、アルバム『イン・スルー・ジ・アウトドア』をリリースした後、1980年にドラマーのジョン・ボーナムの死によりバンドは継続が不可能になり解散。82年にボーナムへの追悼アルバム『CODA』が発表され、これが現在のところ最後のオリジナル・アルバムとなる。但し、現在に至るまで世界で一番再結成が望まれるバンドであり、数回「Led Zeppelin」名義でライブ・アクトが行われ(特に2007年の一夜限り再結成等)、その度に世界中から注目を浴びている。
 もともとこの課題のオリジナルは『わがスーパースターのたちのいえ』[2]というコンペの課題である。今年度は、その『スーパースター』をどうとらえられるかということを、史上最強のロックバンド、レッド・ツェッペリンの存在を冠して考えてもらいたい。
 課題へ取り組む糸口は、数多ある。ツェッペリン自体のアイコン、時代の先駆者としての精神性、後継するアーティスト達への絶大な影響、世界ロック三大ギタリストとしてのジミー・ペイジのスタンス、ロバート・プラントのソロ活動、或いは『天国への階段』の詞性、ロック史が激動する60年代後半~70年代~現在という時代性、各々のメンバーや楽曲群、歌詞、等など。
 課題は、例年通りの前置になってしまうが、様々な社会性や文化性を持ったバンド(今も一応、現役)、レッド・ツェッペリンという音楽グループの住まいを設計することではない。音楽という世界を通して創造をしているツェッペリンの拠り所としての概念(→空間)はどのようなかたちで表現することができるのか、時間や空間を超えた構想力豊かな提案を期待している。


[1] 邦題『レッド・ツェッペリンⅣ』は便宜的に付けられたもので無題のアルバム。ジャケットに4つのシンボルマークがあることから、通称、「フォー・シンボルズ」や「Ⅳ(フォー)」と呼ばれている。内袋全体にぎっしりと歌詞が書き込まれるなどの特徴がある。
[2] 1975年の新建築の住宅設計競技の課題。『わがスーパースターのたちのいえ』。審査委員長は磯崎新。そしてその結果は。。。ほとんどが、海外の提案者が上位をしめた。磯崎はその審査評で「日本の建築教育の惨状を想う」というタイトルで、日本人提案のあまりの硬直化した状況を嘆いている。さらに相田武文が「犯されたい審査員を犯すこともできなかった応募者」という講評をおこなっている。今で言うところの「草食系」である日本人建築家の提案の惨状をみて「磯崎が新建築コンペにとどめを刺した」と評している。


2018/10/25

特論@所沢

 大学院の授業で、実際の建築を観るというプログラムを4回シリーズでおこなっている。ランダムに学生に4つの建築をセレクトしてもらい、その4作品を軸に建築(現代建築)の設計手法を斬っていくという、ある意味かなり乱暴な趣向で展開している。しかし、意外な共通項がみえてきたりと、その意外性が実は真髄にアプローチしていけるのではないか、という妄想を若干抱きながら、今回は所沢聖地霊園(設計:池原義郎)へ。かねがね一度観てみたい建築筆頭だったが、なかなか時間が取れずにやっと念願が叶った、という感じ。それにしても、素晴らしい建築だ。久しぶりに建築をみてアドレナリンが上がる感覚を覚える。素材とディテールの調和が見せる圧倒的な空間の姿は、設計の手法論や、構造・環境といったテクノロジーや、つくることのプロセス現自体への分析など、現在さまざまなかたちで取り組みがなされているのもを超えて(というか、そんなのどうでもいいよ!と思わせる程)、建築がつくる空間のよさを厳然と我々に提示しているなぁ、と思ってしまう。当たり前のことだが、実際に建築をみてみないと本当の意味で分からないことを改めて実感。ちなみに、後の3建築は、五島美術館(これも渋いチョイス)、アテネフランセ、川口市めぐりの森、というラインナップ。さて、どんな考察結果となるか、学生諸君に期待である。(TM)

2018/10/18

アーチの森2018

 先週末の話になってしまったが、武蔵野大学の学園祭(摩耶祭)(2018/10/1314)が開催される。例年、学園祭の実行委員会より依頼され、正門からアプローチした正面にある噴水広場の近くに、木造仮設建築物(作品名:『アーチの森』)を制作している。設計(デザイン)から施工まで、完全にセルフビルドでおこなうことが大きな特徴である。建築物は、学園祭のシンボルとしてPR機能を果たすことが条件として望まれており、後、制作チームとしては、このつくる建築で来場者の方々に憩い、たたずんで欲しいという思いがある。このプロジェクトも今年度で12年目になった。今年度は38mm×89mm2×4材(パイン材)を300mm程の寸法に切断し、その小さなブロック状の木部材を組積造の要領で積層させていくという、いわば非常にプリミティヴな建築であり、かつ全体が大きな繭のような形態をしているというのが特徴である。
 制作する学生は、厳然とした締め切り(学園祭初日の朝に建築が建ちあがってなければならないという縛り)があるので、作業後半は物凄いプレッシャーと共に作業をおこなうことになる。今年度は例年以上に作業の工程マネージメントがスムーズだったのか、大きな問題もなく無事に完成。それにしても、建築が建ち上がった感動は何事にも代え難い、のではないかと思う。学生の皆さんはお疲れさまでした。
 会期中は若干雨も降りましたが、たくさんの方々に来場いただき、思い思いにこの建築にふれて頂きました。ありがとうございました。(TM)


2018/10/11

Live at…

 「アメリカン・ロック」という言葉を、ラジオでも最近耳にしなくなったが、何を隠そう(別に隠している訳ではないが!)、個人的に一番好きなロック・バンドはチープ・トリックである。『チープ・トリックat武道館』が世に出てから40年。その40周年を記念して、当初(今年の春)は武道館のライブを開催の予定だったところ、メンバーの体調不良により延期。残念ながらスケジュールの関係で武道館での開催はならなかったが、Zepp東京にて開催。と、いう訳で有明まで馳せ参じる。
 かれこれ30年程前、学生時代に大阪のフェスティバル・ホールで初めてチープ・トリックを観たのを思い出しながら、その30年とか、『at武道館』からの40年とか、前回の武道館でのライブから10年とか、そういった一塊の時の流れを感じずにはいられない。
 オリジナル・メンバーからドラムのバン・E・カルロスが脱退してしまったが、その穴をギターのリック・ニールセンとヴォーカルのロビン・ザンダーの息子(!)が補っている、というのも時の流れを感じる。個人的には80年代の楽曲、『If You Want My Love』と『Never Had A Lot To Lose』でグッときた。変わらぬロックは鳴り響いた。合掌。(TM)

2018/10/03

風景の転換

 昨夜の台風がすさまじかった。
 我が家の換気用のレンジフードが吹っ飛び(何せ古い家なので)、その威力を実感する。近くの公園では大きな樹木がなぎ倒されていて、園路を通行できないようになっている。普段の風景が劇的に変化することを目の当たりにするのだが、ここからは特に何も教訓はない。ただただ、自然の力の大きさを感じるのみ、である。

 武蔵野大学の授業「プロジェクト」の後期の決起会が吉祥寺で開催。例年、仮設木造建築物を制作し展示するので、それに向けての文字通り決起会である。さて、今年はどんな作品ができるのか、乞うご期待である。
                 (TM)

2018/09/30

逡巡する中秋

  数週間程前の話になってしまったが、大学の研修の一環で講師の講演という催しがあり、学際情報学者の落合陽一氏の講演を聞く機会を得る。勉強不足で存じ上げなかったが、さまざまなメディアで活動などがとりあげられて、非常に著名な方の講演だということを知る(こういう時に、生活の中にテレビがないと、周辺の盛り上がりに置いてけぼりになってしまう、と痛感。。。)
 講演は個人的には非常に刺激的だった。自分なりに学んだことは、①「真剣に今後到来する人口減少&AI技術時代に自分なりのスタンスを考え+確立しなければいけない=これまでのやり方だと多分ダメなので新しい方向性もふまえ対応できるように考えねばいけない(まあ、当たり前といえば当たり前の話だが、かなり痛烈に実感させられた)」、②「効率化(おそらくAI技術がその役割を担う)と差異化(これは、おそらく文化的な側面を過分に含む(落合氏は重層的文化と表現していた)。例えば伝統芸能とかが分かりやすいか。)、という一見究極の対立軸にあるように見えることにおそらく相関関係がある→ゆえに、こっちに何か活路を見出したい」、ということだった、というか、そう思い至ったわけであった。
 そして、ここからがハードル高いかも、だが、それをSNSなどに類するツールなしの条件下でできないか、と超アナログ人間の自分としては思ってしまう。
 そんなことを感じながら、中秋の名月にちなんだ月見団子の残りを眺めながら、さまざまなことに考えを巡らせる秋の夜。(TM)

2018/09/26

ダーティ48

 私事で恐縮ですが、不肖、私めが48になりました。
  家族、先日の水フェスでの卒業生、大学の学生から、それぞれ祝福をいただく。ありがとうございました。
 この歳になってくると、嬉しいか?と聞かれれば、もう微妙な感じになってきてしまっているが、まあ、お祝いいただくのは、本当に嬉しいものですよね。
確実に言い訳できないくらい、昨年にも増して50の足音が聞こえてきている。ちなみに今年は年男なので、次の干支が来ると還暦!と思うと、いろいろと考えさせられる。
 まあ、それはさておき、また更に精進いたします。(TM)

2018/09/17

水フェス2018

武蔵野大学水谷研究室の10周年を記念して、3年前に卒業生が主催して会が開催された。それが、通称『水フェス』。その会を踏まえ、これからは毎年開催しよう!ということになり(半ば強引に(笑))、毎年恒例になった、武蔵野大学水谷研究室のパーティ。
 今年は、4期生のナカイをはじめとした3名の幹事が中心になって、今年も無事開催する運びとなった。3連休の真ん中のせいか、今年は卒業生の参加が例年より少なかったが総勢24名程が参加してくれた。来れなかった代もあったが、また来年以降ぜひ参加してもらいたい。後、特別ゲストで建築家の大塚聡さんにもお越しいただいた。大塚先生、ありがとうございます。
 会の中では、現役生の研究室活動報告があり、その後、誕生日(ちょっと早いけど)お祝いいただくというセレモニーもしていただく。重ね重ね、ありがとうございました。
 2次会も大勢がそのまま流れて、さまざまな話に盛り上がる。途中、いろいろな卒業生の飛び入り参加があったりして、その予定調和でないところが面白い(まあ、現役時代もそうだったが)。
 4期生以上は30歳の大台を過ぎていく年代に突入しており、卒業生もだんだんこっち側のエリアに入ってきている感じもして、時の流れを感じるばかり。卒業生の活躍を期待しつつ、今年もまた吉祥寺において、吉祥寺の夜に乾杯、な1日でした。(TM) 

2018/09/10

猪苗代、磐梯をめぐる


 東北方面へ所用があり赴き、少し足を延ばして、磐梯高原にある諸橋近代美術館で開催中の『パメーラ・ジェーン・クルック展』へ。PJクルックは何と言っても、キング・クリムゾンのアルバムジャケットで知っていたので、展覧会開催の情報を知り観に行きたい気分満載だった。国内の、この美術館でかなりの数のPJクルックの作品を所蔵しているのも知らなかったし、絵画作品自体も実際に観てみると、やはり新しい発見がある。絵自体の内容というよりも、絵画のフレームも含めて密度高く描き込みまくっている様子を観て新鮮な感覚をもった。
 せっかくここまで足をのばしたので、猪苗代で、はじまりの美術館(設計:竹原義二)、野口英世記念館(設計:竹中工務店)や郡山の街並みを観てみる。さまざまな場所で、さまざまな文化的な活動が展開されているのを観ながら、一つ一つの点では魅力的なものが、線的、或いは面的なつながりをもつのは難しいのだろうなぁ、と、まあ、当たり前のようなことを考える東北なのでした。(TM)

2018/09/02

幻画~像の表皮展

 所要で都心に出たついでに、原美術館で開催されている、『小瀬村真美:幻画~像の表皮展』へ赴く。原美術館らしく、渋いテイストの展覧会で非常に好感が持てる。最近、どうも大業な演出がみられる展覧会が見受けられるので(主に六本木方面)、こういう展示は落ち着く感じがする。あくまで個人的な感想だけど。。。
 展示は写真と映像駅な手法を素材としながら、絵画という止まった二次元のものに、時間や動き(物理的な)を与えて揺さぶりをかけているような作品、であり僭越ながら非常に力作だなと感じた。作品の素材になっているオブジェなどの立体物も併せて展示していたが、原美術館の空間特性への活かし方が少し甘い感じがして、もう少しキリッとした設定をしてもいいかなぁ、という感想を持ったが、まあ、そこは建築サイドからみた勝手な感想だろう。まだまだ暑さがつづくなか、心地よく通り抜ける風のような空気感を感じることができました。(TM)

2018/08/26

舞子の浜

 夏季休暇は毎年恒例の故郷へ帰り、近くの神戸舞子へとでかけていく。名称「舞子の浜」として古くから知られ、さまざまな場面で詩に詠まれていたりする。瀬戸内海越しに眺める淡路島が絶景とのことで有栖川宮が別邸を構えたことでも有名な地である。
 現在は、世界で一番長い吊り橋として有名な、明石海峡大橋が大きな姿を構えるのだが、この橋ができてもうかれこれ20年が経ったことになる。いやはや時の流れは早い。そして近くには五色塚古墳があり、まさに新旧織り交ぜて日本の歴史の時間が交錯する場とも言えるだろう。悠久なる時の流れを感じつつ、変わらぬ海の眺めをみて感じる故郷の日々であります。(TM)

2018/08/21

進撃の建築家

 建築雑誌『建築ジャーナル』に恩師である布野修司先生が「進撃の建築家」という連載をされており、布野先生が気になる(おそらく)建築家を紹介するコーナーがある。8月号はその29回目の記事にあたり、拙生、水谷のことを記事にしていただく。
 その冒頭は、「水谷俊博は、なぜかマイケルという。初めて会ったのは1995年の阪神大震災直後である。設計製図の演習で二十歳のマイケルに出会っていたと思うけれど記憶にない。・・・」という文面から始まっており、その私的な感が全編に展開されており、非常にこそばいような恥ずかしいような、個人的には妙な塩梅である。いずれにせよ、活動を論じていただき、布野先生には感謝の念につきません。書店などで雑誌をみかけたらご一読ください。(TM)

2018/08/07

ゴードン・マッタ・クラーク展

 国立近代美術館で『ゴードン・マッタ・クラーク展』が開催されており、都心に出たついでに赴く。おそらく、日本では初めてのひとまとまりになった展覧会だろうなぁ、と思っていたら、アジア初の回顧展とのこと。
 作品は断片的なものしか知らなかったが、多様なテーマの作品群が一堂に会しているので、なかなかヴォリューム満点、という感じである。会場の展示構成は公園のような場をつくることをコンセプトにしているらしく、にぎやかな会場の様子を演出しているように見受けられる。建築的な装置(大きな階段状のフロアやフェンスで囲まれたスペース、など)も点在しており、いい意味での雑然さを演出している。それがマッタ・クラークが活躍した70年代のニューヨークの雰囲気を醸し出すことを狙いにしているところから来るものなのかもしれない。ただ、個人的には、もう少しピリッと展示を見せてくれるようなしかけがあってもいいかな、と贅沢な望みを感じてしまう。
 アイデアを出すだけなのは、ある意味簡単なのだろうが、それを実際やってしまう、というバイタリティと力づよいロジックに、やはり感銘を受けずにはいられない、のでありました。(TM)

2018/07/29

フィールド・ワーク・ゼミ@谷中&池袋

 3週間ほど前のはなしになってしまったが、久しぶりに研究室の活動を学外で展開。ずっと学内でゼミをやりながら、あまりに停滞してきたので、思い切って、学生の研究の対象サイトへ出てフィールドワークという名のもと、街歩きと洒落こむ。と、思ったら、強烈な猛暑が襲ってきた。ほとんど歩いている場合ではない状況の中、谷中銀座~へびみち~森鴎外記念館~池袋駅前~東池袋、栄町通り&美久仁小路、と歩いてみる。谷中も池袋(闇市起源の飲み屋群)もサイトとしては申し分ない。個人的には歩きながら非常にテンションが上がったが、学生たち本人は果たしてどうだったのか。奮起を期待したい。
 街歩き終了後、池袋で反省会。建築の話もそこそこに、いつのまにか恋話になってしまうあたりが、さすが、若者のすべて(って、もう古いよね。。)。まさしく、恋に、勉強に、頑張ってもらうことを祈るばかり。池袋だけに(シネマロサのことを言ってます)、映画『カメラを止めるな』を絶対に観るように学生に推薦。果たして、卒業研究はどこに向かうのか、期待するばかりである。(TM)

2018/07/15

ひまわり

 予測不能なことが起こり、バタバタとしている。それにしても、本当に意外なところで、災いが起こるものだと、改めて認識。そんな中、ブログが停滞していましたが(あまりにも、言い訳染みててすみません)、ここは、しっかりと、W杯に出ているサッカー選手のように、気持ちを持たないとダメだと自らを戒める。
 庭の鉢に植えた、ヒマワリが咲きほこっている。ちなみに、写真に写っていないが、子供たちが育てている朝顔も、その横で咲きほこっている。朝顔、という響きが、また懐かししくて素晴らしい。
 季節は毎年訪れ、力強い花の群れに、ある意味力をもらってるような気がする。


 こういう時(って、どういう時だ?)には、ローリング・ストーンズを聴くのがいい。

しかも、ファースト(他の盤と比較すると、あまり一般的に知られてない)。我が家にあるのは、中古の、なんととオランダ盤(とは言ってもUK盤と内容は同じ)。
 さて、ひまわりや朝顔のようにつよくあるべし、と心に銘ずる真夏の日々、であります。(TM)