2019/03/31

年度の終わりと雑感と:(2018年度)

 いよいよ年度末も大詰め。
 その年度末のまとめの一環だが、大学では年度毎に学生の作品集を制作しており、今年度も巻頭あいさつのテキストを書くことになった。
 ちょっとフライング気味ですが、2018年度を振り返るということで、全文を以下に掲載させていただきます。
(このブログで書いた内容を一部盛り込んでいます。)
 さて、いよいよ来年度へ向けて始動しだす。                         (TM)

2018年度学科作品集 はじめに
 2018年度(今年度)の『卒業設計・卒業制作・卒業論文集』も無事に完成しましたのでここにお届けします。工学部建築デザイン学科の作品集としては記念すべき第1号になりますので、無事に発行できたことに感謝するとともに、学生諸君にも「おめでとう」という言葉を贈りたいと思います。
 と、おめでたい感覚に浸ってしまいながらも、特に卒業していく学生諸君にはこれから社会の荒波に揉まれていく訳です。そこで、少し一緒に考えてみたいことがあるので、ここに記したいと思います。卒業設計の最後の公開審査会で、ある審査委員の先生が「テクニックに走っていて、泥臭くやっていく武蔵野大学生らしさが無くなっているように感じるのが残念。」、というコメントがあり、自分も何となく物足りなさを感じていたので、それが心にひっかかっています。
 それを、自分なりに考えたところ、作品が発する余白(のようなもの)というものが、無くなっているのでは、と思いました。その作品の持つ余白(のようなもの)というものは、しっかりと作者(設計者を含む)がデザインの答えを持って初めて提示できる(逆に言うと、その答えを持ってないとダメということ)と思っているのですが、プレゼンの仕方によっては、それは観る側や感じる側に委ねられることがあります。そして、それがある強度を持ってできていて、作品自体の出来がよければ、成果物としての妥当性はそれ程重要ではなくなってしまう、と思うのです(まあ、それが良いか悪いかは、ちょっと微妙なところがあるのですが、その話をしだすと長くなるのでここでは割愛します)。で、そう考えたところ、余白(のようなもの)が無くなってきているのは、それこそ、泥臭く自分の作品(論文も含む)に対峙(或いは格闘)していないのではないか、ということを感じずにはいられません。学生諸君、どうでしょうか?
 さて、ここでひとつトピックを紹介したいと思います。先日、宴席でのある学生との会話で、「今の日本の首相(あえて名前は記しません)をどう思う?」と何気なく聞いたところ、「えー、と何か新しいことしようとしてる人ですよねぇ。。」という答えに、ひっくり返ってしまった、という表現では済まないくらいくらいに、すさまじい衝撃を受けてしまいました。果たして「新しいこととは、、、消費税増税のことなのか、、はたまた憲法改正のことなのか。。。」と悩みながらも、「この会話に余白らしきものは無いわな。。」と呟く(ツイートのことではない、念のため)自分がいました。
 きちんと物事を捉えて考えて欲しい、そして泥臭くそれに対峙して欲しいと思います。まさに「優れた音楽を聴くには、聴くべき様式というものがある。聴くべき姿勢というものがある。」(『騎士団長殺し』村上春樹著、より)と感じ入りながら、卒業生みなさんの今後のご活躍を期待しています。 (TM)

2019/03/24

卒業とか謝恩会とか

 武蔵野大学の水谷研13期生のゼミ生13名全員が無事卒業。卒業式、学科謝恩会、研究室謝恩会も無事執り行われて、ゼミ生からの本当に素敵なプレゼントをいただく。これで1年の疲れも吹っ飛びますね。ありがとうございます。学生諸君は改めて、おめでとう。4月からの新しい世界での活躍を期待したい。


 学科謝恩会では、毎年恒例のパフォーマンス(何故か毎年恒例になってしまっているかは謎なのだが。。。)を、非常勤でお世話になっている建築家の大塚聡さんと熱演。今年も例年通り、卒業式前々日の夜に大塚さんと西荻窪でリハーサルをおこなう(果たして学生はこの苦労が分かっているのか?(別にそこまでしなくていいんだけど、やってしまうのだなぁ。うむ。まあ、しょうがない。)と、例年通り思いながら)、というおまけつき(兎にも角にも大塚先生、ありがとうございました)。しかも今年も昨年に続き演目をわざわざ変えてくるというチャレンジも敢行し、新鮮だった。


 昨年も同じことを書いたが、歳を追うごとに中々このプログラムも体力的にきつくなってきている。
 改めて年度末を噛みしめるのでありました。(TM)

2019/03/22

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 終わりは突然に訪れる。
 というのは少し大げさな表現かもしれないが、昨夜、スポーツ配信サイトでMLBの開幕第2戦「マリナーズ対アスレチックス @東京ドーム」の中継を観戦していたら、試合途中に突然「イチロー、本日で引退」のテロップ(もちろん英語で)が流れ、一瞬、自分の英文読解が間違っているのか?、或いは視覚の問題か?と思っていたら、結局、本当に最後のゲームになってしまった。こんな感じで引退するのは初めてだよなぁ、と呆然とみているうちに、最後の8回裏守備についた直後に交代が告げられ、イチローの選手としての最後の雄姿を見届けることになる。涙なくして観れない。
 下記に、8年くらい前に学生に向けて書いた雑文(拙文エッセイ)を掲載します。ひとつの時代が終わることを強烈に感じる。(TM)

2010年度・回顧                         
19951021日。第1戦、日本シリーズに仰木彬監督(当時)率いるオリックス・ブルーウェーブが、野村克也監督(当時)率いるヤクルトスワローズと対決した。1995年。そう、117日に阪神・淡路大震災が起きた年に、神戸をフランチャイズに持つブルーウェーブがパ・リーグを制覇して臨んだシリーズだった。神戸市民の期待を一心に集めるばかりでもなく、日本中の応援を受けての決戦だった。しかし、結果は14敗の完敗。完全に野村ID野球に抑え込まれるかたちでブルーウェーブは敗退した。最後の試合が終わった後、イチローはコメントした。
「このような不甲斐ない試合をしながら、完全に負けてしまいました。でも、こんな僕たちのプレーを、ブーイングもせずにスタンドで応援してくれる神戸のファンをもてて、僕たちは誇りに思います。」
神戸市民全員が涙した瞬間である。もちろん僕も泣いた。
2011311日。東北関東大震災が起こった。僕は前橋市美術館の現地調査をしている最中に遭遇した。前橋は東京と同程度で被害はそれほど深刻ではなかったが、ひどい揺れはすさまじい恐怖感をともなう。そして時がたって阪神・淡路大震災での厭な記憶がよみがえってくる。僕も僕の家族も睡眠誘導剤を飲まないと眠れない日々が時折ある。そして社会の状況もこの原稿を書いている時点(3/28)ではなかなか回復していない。被災地からある程度遠く離れたこの東京でも、電気は断続的に停電して止まり、水やお茶はほとんど店頭に並んでいない、という状況である。
さて、この状況で建築に何ができるのか?ということである。これはおそらくこれからの建築メディアでも盛んに語られるだろうし、語られるべきだろうと思う。そして空間造形や環境プロジェクトで僕たちがおこなっている活動やプロジェクトも同様だと思う。環境プロジェクトで制作している『アーチの森』(今年度の『アーチの森2010』は雑誌『新建築』にも掲載された)は、どう展開できるかを考えた時、仮設建築のあり方が見えてくるかもしれない。『アーチの森』はセルフビルドでの施工が前提となるため、誰でもつくれる工法をベースに、木材の組方や既成金物の工夫により、木質材料の可能性や設計と施工を区別しない建築生産の可能性を探っている、という背景がある。何か使えるかもしれない。空間造形4もしかり。単に課題の設定に行儀よく応えていくだけではダメである。それを超えて、建築のあるべき姿を語れるような、そんな思いを作品に込めて欲しい。そうすることで建築の可能性は高まっていく。2010年度の水谷研のテーマは『レッツ・ロック・アゲイン』だった。そう、まさに「やるしかないんだよ。」の世界である。日本がこのような状況の今、学生のみんなには、そんなパワーが望まれている。
19961024日。前年度日本シリーズで敗れた神戸ブルーウェーブは、再度パ・リーグを制して日本シリーズに登場。長嶋茂雄監督(当時)率いる巨人相手に41敗で勝ち、前年の雪辱を晴らし念願の日本一に輝く。グリーンスタジアム神戸で仰木監督とイチローは宙に舞った。
そう、学生諸君。たたかってください。そうすれば結果はついてくる。
だから、『レッツ・ロック・アゲイン』!(TM)

2019/03/18

「アーチの森2018」掲載

 武蔵野大学水谷研で設計、施工をした、仮設木造建築作品、『Lamp It Prose-アーチの森2018-』が雑誌「建築と社会」20192月号に掲載されました。

 学生にとってもこういう風にメディアに掲載されると、励みになってモチベーションもあがっていく。
 今後の活動も乞うご期待。(TM)

2019/03/14

但馬~丹後~播磨へ

 少し時間が経ってしまったが、所用があり、兵庫県の北方面、西方面とちょっとだけ京都北方面に赴く。
 もちろん建築も観る訳だが、その主なラインナップは、植村直己冒険館、但馬国府国分寺館(以上設計:栗生明)、豊岡文化会館(設計:増田友也)、安野光雅館、木の殿堂、姫路文学館(以上設計:安藤忠雄)、書写の里美術工芸館(設計:宮脇壇)、という感じ。
 中でも予想以上に良かったのは、木の殿堂。丁度、季節的に雪の中をかき分けて施設にアプローチしなくてはならない折ということもあり、その実体験も効いている。後は雑誌で見ていたよりも(これは、確か自分が学生時代後期に竣工した建築)かなりスケールが大きくて、そこが新鮮な驚きだった。だいたい、想像していたよりも実物が小さいということが多いので個人的には興味深い。木という素材感を、これでもかという圧倒的なかたちで表現している空間が清清しい感も生む。こういういわば宮殿然とした建築が、最近はなかなか建つことが難しくなってきたので、いいかたちで利用されていくのを望むばかりである。(TM)

2019/03/13

研究室引継ぎ会

 年度末ということもありさまざまな事柄がまとめに入っている。
 4年生は卒業間近になってきた。
 来年度水谷研に配属のメンバーを交え、13期生、14期生の引継会を吉祥寺(老舗タイ料理店)にて開催。1学年しか違わないので、さすがに知らない顔はいないと思うが、じっくり話したことない学生同士の関係もあり、我ながら本当にいい機会だと思う。今年度(13期生)ゼミのスローガンが『酒を呑むやつは信用するな、でも、呑まないやつはもっと信用するな Over And Over And Over!』なので、こんな宴席にいい感じにシンクロしているような感じがする。それぞれの学生たちの次年度の活躍(卒業生は社会人ですね)を期待する限りである。(TM)