2023/12/31

Look Back 2023 その2

 2023年もいよいよラストです。と、いうわけで例年、誰に頼まれる訳でもなく勝手にやってますが、全く個人的なマイ・ベスト2023を振り返り。

 昨日に引き続き、今日は音楽編。今年もあまり新譜を手に入れることが少なく、もっぱら中古アナログレコードをボツボツとゲットしていたという次第。ので、セレクトするのにかなり迷ったのだが、2023年のマイ・ベストを選んでみる。

順番はこんな感じ。

 1位:『i/o/ Peter Gabriel

 2位:『Let’s Start Here/ Lil Yachty

3位:『Lean In/ Gretchen Parlanto & Lionel Loueke

4位:『The Barad Of Darren/ Blur

 5位:『The Mashmallow Man/ Gary Wilson

     『Leisurevision/ Leisure

         Wait Til I Get Over/ Durand Jones    

 今年は、春先に「リル・ヨッティ」の新譜を聴いて、コレだ!と感じ(今年度の研究室のテーマソングにしたし)、そこから中々いいアルバムに出会えなかったが、年末のギリギリで、「ピーター・ガブリエル」の新譜が何と20年振りのリリース。これが、すさまじい名盤で、年末ずっと聞いていた。マジで泣けるので、必聴。

 という訳で2位は「リル・ヨッティ」に。ラップ・アルバムというよりは、非常にサイケで、70年代や80年代を思い起こさせながらも現代的な音作りがされている名盤だと思う。

 3位は「グレッチェン・パーラト」のリオネール・ルエケとのコラボ作。ミニマムなヴォーカルとギターの共演が素晴らしい。80’sの女性コーラスバンド、クライマックスの「I Miss You」のカバーが最高。

 4位は「ブラー」の新作に。期待値が高かった分最初に聴いた時は若干物足りなさがあったが、聴けば聴くほど味がでてくるアルバム。さすが、デーモン・アルバーン。個人的には「Barbaric」が名曲。

 5位も選び切れずに3作品。「ゲイリー・ウィルソン」は相変わらずのアヴァンギャルドでヒネたメロディーで、カッコいい。
 「レイジャー」は朝のラジオでかかっていて、良かったので新譜をゲット。ニュージーランド出身のエレクトロ系という感じだが、本作は70年代から90年代のいろいろな要素がつまった楽曲群。最近こんな感じが好きかな。
 ソウル系で1枚、ということで「ドラン・ジョーンズ」の新譜を。このところバンド形式だったが今回はソロ作。骨太で力強い。そして、丁寧なつくりは新しい(と感じる)。ダニー・ハサウェイの「Someday We’ll All Be Free」のラップのテイストも盛り込んだカヴァーが良い。

 そんなこんなで2023年もたくさんのいい音楽に出会えた。さて、2023年はどんな音楽に出会えるでしょうか!

 よいお年を!(TM)

2023/12/30

Look Back 2023 その1

 2023年もいよいよラストです。と、いうわけで例年、誰に頼まれる訳でもなく勝手にやってますが、全く個人的なマイ・ベスト2023を振り返り。で、まずは映画編。


 映画はまず映画館のスクリーンで観るべし、という主義。今年は夏から、いろいろとバタバタし過ぎで8月以降映画館にあまり足を運べなかった。と、いう数少ない観た映画34作品の中から、ということなのだが、前置きが長くなるが、

 ・一番泣いた映画                                               →Blue Giant(立川譲)(マジでハンカチが足りないくらい泣いた)

 ・一番アガッた映画                                 →『アクロス・ザ・スパイダー・バース』(今のアニメの最高到達点、マジで腰を抜かした)

 ・一番笑った映画                                  →『逆転のトライアングル』(リューベン・オストルンド)(ラストシーンも素晴らしかった)

 ・一番演技に驚いた映画                               →『TAR(トッド・フィールド)(ケイト・ブランシェット、マジ恐るべし)

 ・一番学生に薦めた映画                               →『エブリシング・エビリウェア・オール・アット・ワンス』(ダニエルズ)(まさに現代の映画!これがアカデミー作品賞とは時代が変わったな!)

という感じで、ビッグ・バジェット系のこの5作品はランキングから外すことにした。

さて、今年のマイ・ベスト5はこんな感じ。

 1位『アフター・サン』/シャーロット・ウェルズ

 2位『クライムズ・オブ・フューチャー』/デヴィッド・クローネンバーグ

 3位『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』/古賀豪

 4位『エンドロールのつづき』/パン・ナリン

 5位『ベネデッタ』/ポール・ヴァーフォーヴェン

 『アステロイド・シティ』/ウェス・アンダーソン

    『別れる決心』/パク・チャヌク

 『レッド・ロケット』/ショーン・ベイカー

 今年は、ずばぬけて好きな映画がなく、かなり迷った。そんななかで、

 『アフター・サン』が、非常に良かった。もう一度観たいと(何故なら一度見ただけでは、理解できないことが多いので)一番感じた映画。11歳の娘と父親との2人旅を回顧してしている設定の映画で、個人的に自分の娘と重ね合わせてしまうので、完全にもう1回観たら号泣することが分かっている。そして、クライマックスで流れる、クイーン&デヴィッド・ボウイのあの名曲の演出が、素晴らし過ぎる。

 『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』はクローネンバーグ久々のクローネンバーグらしい映画だったが、世間の評判は微妙な感じだった。が、設定(「人類に痛みという感覚がなくなった近未来?に、新しい臓器を、タトゥーを施して摘出するという行為をアートとして表現する」と書きながらこの時点で既に意味不明感ビンビン!)の異才さ、役者の演技、美術のデザインのオリジナリティ、すべて変で、奇妙で、と観ながら恍惚とする。

 『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は評判が高かったので、まさか!と思い観たら、感動した。今のアニメにはない(若干前時代的な)テイストが良く、水木しげるのメッセージも十分伝えている。最後の最後に「鬼太郎誕生」のタイトルが出る瞬間はマジで泣ける。

 『エンドロールのつづき』は、映画を巡る、インド映画らしくないインド映画。巷では『ニュー・シネマ・パラダイス』の再来と話題になっていたが、全然違う!そして、全然、こっちの方が良い!! のである。映画の本質について、そして、今後の映画を考えさせる、非常に射程の深い映画だと思う。

 5位は選べず、たくさん挙げてしまう。『ベネデッタ』はポール・ヴァーフォーヴェン節全開で素晴らしい。最初から最後まで開いた口が塞がらない傑作。それにしてもクローネンバーグ80歳、ヴァーフォーヴェン85歳、でこの作品群とは。すさまじすぎる。

『アステロイド・シティ』は、あまり話題にならなかったが、ウェス・アンダーソンが、ますます意味が分からない(褒めてますよ)所まで到達していて、興奮した。

『別れる決心』は、さすがのパク・チャヌク。ストーリーの展開と色気が半端ないです。

『レッド・ロケット』は、これほどダメな(史上最高に感情移入できない)主人公の話で、ここまで魅せて面白い作品づくりに感服。新鋭、スザンナ・サンの存在感が良い。

 という感じで、来年もいい映画に巡り合いたいですね。

 明日は音楽編、いきますよ。(TM)

2023/12/29

Look Back 2023 前振り

 2023年もいよいよラストです。と、いうわけで例年、誰に頼まれる訳でもなく勝手にやってますが、全く個人的なマイ・ベストを映画と音楽で振り返る。

 という訳なのだが、ちょっと前振りで、今年の写真データを整理していて思い出したトピックを。

 夏に家族の用事で都心に出て、4時間余り時間を潰す必要が出てしまい、近くにあった神保町シアター(設計:日建設計)を観に行く。すると、丁度、映画が一篇始まるいいタイミングでの訪問となり、えいっ!と観劇した次第。映画館で「男が惚れる男たち」(昭和の)特集の上映をしていて、観たのは「ボクサー」(監督:寺山修司)。寺山修司監督に惹かれての鑑賞だったのだが、この映画が、予想に反して非常に素晴らしかった。

 まず、寺山修司監督の作品なのだが、アート的ではなく非常に商業的な映画。そして、主演が菅原文太と清水健太郎で、まさに、丁度、ちょっと前に公開されていた『ロッキー』と重なる。と、いうか、どっちかというと「明日のジョー」かな。ボクサーのファイトする空気感が濃密に描かれており、この時代のボクシング映画、しかも邦画では、かなり異端だったかもしれない。何と言っても、昭和の空気感が半端ないのが、良い、のである。来場者もほとんど高齢者男性ばかり(自分が一番年下かも、という感じ)で、ある意味タイム・スリップした感覚を味わった。

 この劇場、都市型小劇場ということで、共用部(ロビー)が以上に小さいので、終演後、併設した別ホールでやっていた吉本系のライブを観終わった若い女性客と、我々が交わって、何とも形容しがたいミスマッチ(よく言えば、キッチュ)な雰囲気を形成していた。いやはや。でも、これも一興。

といった映画にまつわる、休日の午後でありました。(TM)

2023/12/22

トアロードでデリカテッセン

 所用で神戸まで赴く。ものすごく弾丸行程だったのだが、近くまで来たので、昼ご飯に神戸元町トアロードにある、「トアロード・デリカテッセン」へ。

 なぜかというと、ここのサンドイッチが、作家の村上春樹氏が「一番おいしいサンドイッチ」とエッセイの中に書いていたから。一度、食べてみたいと長年思っていたのだが、念願の対面。

 なるほど、確かにこういうのが美味しいものだなぁ、と実感。素材のよさを、シンプルに表す、ということなのだと思う。建築もおんなじだな、と一人で納得。

 そして、帰路に就く新幹線で、『街とその不確かな壁』を読み進めるのであります。疲労困憊となるような、慌ただしい年の瀬だが、ゆっくりと時がながれる雰囲気を、小説に託している自分がいる。元気にいきましょう。(TM)

2023/12/18

ねじまき鳥クロニクル

 ちょっと前の話。唐突な話で恐縮だが、村上春樹の小説の中で一番好きな作品は『ねじまき鳥クロニクル』である。

 これは、学生時代に読んで衝撃を受けた。それまで村上春樹小説は全部読んでいたのだが、1・2巻(第1部&第2部)が始めに出て、それを読んだ時の感想は、「残念ながら、村上春樹は終わったな。。。」という感じだった。その2巻で完結していたと思ったら、半年くらいして突如3巻目(第3部)が出て、それを読み終えたとき、感動し過ぎて、京都の下宿を出れなくなってしまい3日くらい茫然として過ごした記憶がある。それくらい、個人的に琴線に触れた作品だった訳だ。

 と、この話をし出すと長くなるので割愛するが、その『ねじまき鳥クロニクル』が舞台化されたのが3年前。コロナで公演が中断してしまい、その再演が11月にスタートした。ずっと気になっていたのだが、なかなか時間が取れずに諦めかけていた折、たまたま近くの仕事がキャンセルになったタイミングで、東京芸術劇場に馳せ参じた。ダメ元だったが、残り2席(多分)で滑り込んだ。

 いや、あまりの素晴らしさに、驚嘆&感動の嵐。50歳を過ぎると、色んなことに触れても感動しなくなってきているのだが、、、いや、素晴らしかったです。まさに身体性というものをダイレクトに感じられる劇。演出・振付(インバル・ピント&アミール・クリガ―)、そして舞台美術は圧巻。そして、大友良英トリオが生で演奏しているのが(これ、恥ずかしながら、劇場に行くまで知らなかったけど!ライブ演奏とは、イヤハヤ。)、劇の良さを別次元に押し上げている。と、感じ入る。

 最近“AIの裏をどうかくか?”といいうことを、ずっと、漠然と考えているのだが、「こういうことか!」とひとりで納得。現在進行形で『街とその不確かな壁』を、非常に遅ればせ読んでいる身にとっては感慨もひとしお、でありました。(TM)

2023/12/16

メイキング・ムーヴィーズ

 最近、アナログ・レコード盤が、静かな人気を呼んでいるようで、中古レコードの値段が、ものすごく上がってきている、ように感じる。なので、なかなか良い盤に手を出すことができなくなってきている。アナログ・レコード派としては、厳しい時代になってきたなぁ。。。という感じ。ちょっと前までは、本当に低価格だったのに。。。と言っても始まらない。

 IT技術が進んでくると、アナログへの逆へのベクトルも働くのだろうが、これもその一端なのかもしれない。

 と、そんななか、レコード店で、ダイア―・ストレイツの『ムーヴィング・ピクチャーズ』を、いい価格で掘り当てる。名曲「ロミオとジュリエット」収録の名盤。そして、何といってもジャケットがいい。真っ赤な無地のジャケット、そしてエッジの水色ラインのデザインが、最高、である。ミニマル、かつビビッドなジャケットをみながら楽曲を堪能するにであります。(TM)

2023/12/13

旧市民会館の幻影

 先週末大宮方面へ所用があり、閉幕ギリギリのタイミングで開催されている「さいたま芸術祭2023」の会場を訪れることができた。旧市民会館おおみや(設計:加藤渉)が昨年閉館したのだが、再び会期中のメイン会場とされて開館されている。アート祭のディレクターを、現代アート集団の“目”がつとめており、このメイン会場の構成も、予想を超えて只ならぬ物に変容していた。

 劇場内の空間を、ガラスのパーティション(壁)を設置し室や空間を分断し、かつ、劇場内の裏方空間も含めて全て見せる空間構成がなされている。なので、施設内をすべて観覧しようとすると、最低2回は屋外に出て、また入り直す(=施設に計3回入る)、という動線ができあがっていて、まさにコンバージョンの面目躍如である。施設内を巡っているなかで、作品が展示されていたり、旧施設が閉館して打ち捨てられた様子がガラス越し見えたりする空間が、万華鏡のように現われてくるので、ワクワク感がとまらない。

 劇場は非常に形式が決まっているビルディング・タイプなので、設計する際はその標準型をどう崩していくか、ということを僕たちも考えるのだけど、そのヒントがリアルに(実際出来てるし!)体感できる。後、会場内を清掃している人を見かけるのだが、これもおそらく作品の一部になっている(アート・パフォーマンスになっている、多分)感じも、ユーモアが効いていていい。

 あまり時間がなく駆け足で見るような感じだったのだが、建築のいろいろな可能性を現出させていて、はやり観る者を元気にさせる取り組みに感銘。そうです、元気にいきましょう。(TM)



2023/12/05

金色の絨毯

 今年は非常に暖かいため、紅葉が一様に遅い。大学内のイチョウの木の葉っぱもやっと黄色になり、見ごろを迎えている。

かつて、武蔵野大学の建築デザイン学科を創設された河津優司先生とキャンパス内を歩いているときに、「水谷君は、まだ若いから、分らんやろうけど、毎年この紅葉の姿を見ると、後何年元気にこんな景色を見れるのかなぁ、と思うよ。」と、少し笑いながら話をされていたのを思い出す。何となく、それが分かる年齢に近づいてきているように思う。黄色い葉っぱが地面に敷き詰められている様子は、本当に美しくて、晴天の日は金色の絨毯の上を歩いているような気分になる。そんな様子を実感すると、世の中捨てたもんじゃぁない、と改めて感じたりする。

さて、12月に入り、いよいよ年末が近づいてきているのを実感しながら、いろいろと整理をおこなうつももり。ちょっと前のこともブログにUPいたします。(TM)