2023/12/13

旧市民会館の幻影

 先週末大宮方面へ所用があり、閉幕ギリギリのタイミングで開催されている「さいたま芸術祭2023」の会場を訪れることができた。旧市民会館おおみや(設計:加藤渉)が昨年閉館したのだが、再び会期中のメイン会場とされて開館されている。アート祭のディレクターを、現代アート集団の“目”がつとめており、このメイン会場の構成も、予想を超えて只ならぬ物に変容していた。

 劇場内の空間を、ガラスのパーティション(壁)を設置し室や空間を分断し、かつ、劇場内の裏方空間も含めて全て見せる空間構成がなされている。なので、施設内をすべて観覧しようとすると、最低2回は屋外に出て、また入り直す(=施設に計3回入る)、という動線ができあがっていて、まさにコンバージョンの面目躍如である。施設内を巡っているなかで、作品が展示されていたり、旧施設が閉館して打ち捨てられた様子がガラス越し見えたりする空間が、万華鏡のように現われてくるので、ワクワク感がとまらない。

 劇場は非常に形式が決まっているビルディング・タイプなので、設計する際はその標準型をどう崩していくか、ということを僕たちも考えるのだけど、そのヒントがリアルに(実際出来てるし!)体感できる。後、会場内を清掃している人を見かけるのだが、これもおそらく作品の一部になっている(アート・パフォーマンスになっている、多分)感じも、ユーモアが効いていていい。

 あまり時間がなく駆け足で見るような感じだったのだが、建築のいろいろな可能性を現出させていて、はやり観る者を元気にさせる取り組みに感銘。そうです、元気にいきましょう。(TM)