2012/03/25

久方振りの


大学時代の友人のイシダ君が我が家に来る。
イシダ君は建築の人ではなく、今は界面活性に関する研究をしている研究者である。この度、めでたく関西方面の大学に赴任することになり筑波の研究所を離れるため、関東を離れる前に一度飲もう、ということになった次第である。ついでに産まれて間もないうちの娘も見たい、ということで武蔵関までお出ましいただく。
いや本当に久しぶりで、お互いの結婚式以来じゃないか、ということで、まあ盛り上がるしかないわな、という感じ。多分会うのは7年ぶりくらいなんだが、話しはじめると学生時代にフラッシュバックする感じで、お互いマシンガントークの応酬。あっという間に6時間くらい過ぎ去ってしまった。
イシダ君も自身の研究では新しいことにチャレンジしていくエネルギーが満々で、話していて楽しい。こっちは今時の住宅デザインの話とか美術館設計とかの話をして、イシダ君からは界面活性の奥深い話を聞く。やはり、今流行りはナノなようで、ナノとマイクロの世界の距離間(比喩的な意味での)とか、その間に横たわる未知の世界。そして、原子以下の単位(ヴォリューム?)の可能性など、非常に興味深い話を聞かせてもらう。
どんな世界でもそうだが、やはり「たたかって」いる感がある人の話はおもしろい。改めて、「たたかって」いる意味の大切さを感じる。「たたかう」気持ちを止めたら、僕は建築を止める時なんだろうなぁ、とビールでほろ酔いになりながらひとりごちてみる。
イシダ君にはぜひ関西方面でも活躍を期待しています。

2012/03/21

年度のおわり


年度末になってきました。
学生も卒業をしていき、また1年が終わったんだなぁと感じる今日この頃。
大学では毎年学生の作品集(『Mu』という名前です)を制作しており、その中で教員も毎年1年の総括をすることになっている。自分の担当している授業を総括するのが普通な訳ですが、僕は場違いに随想を勝手に書かせていただく。卒業生は見れるチャンスがないと思いますので、全文を以下に掲載します。卒業生のみなさんは懐かしさとともに、どうぞ。

以下、転載です。

■2011年度 回顧・雑感
2011年度をふり返ってみて、どうだったかと考えてみる。2011年3月11日に東日本大震災が起こって丁度1年程が経過した。このタイミングで、どうしても震災のことに触れずにスル―してしまうのはフェアじゃないような気がしているこの気持ちを明確な文章として表現するのがむずかしい。漠然ともどかしい塊を抱えているような感覚なのである。昨年度も書いたが僕の実家が神戸にあるせいで95年の阪神・淡路大震災は他人事ではない。でも、当時僕は京都にいたためにダイレクトな被災は幸いにも免れる結果となった。ちょっと距離感がある感覚。東日本大震災に関しては、僕はまったくの部外者だし大きな距離感が厳然とある。僕には語る資格というものははっきり言って全くない。の、かもしれない。しかし、何かその漠然ともどかしい塊をどうにかしたいと思いながら2011年度を学生諸君と時間を共に過ごした。さて、学生諸君はどうだっただろうか?
卒業設計・論文の講評会でも、「もっと震災にアプローチした作品があってもおかしくないんじゃないか!」と若干アジッてみたりもした。空間造形4も実は同じ気持ちでいた。全く無責任に放言させてもらうと、課題にこたえるということが大前提ではあるが、2~3作品くらいは課題の枠組みなんかはぶっ飛ばして、そのメッセージを自分なりにぶつける案があってもいいんじゃないかと思った。僕が学生時代なら、おそらくそんな勝負をしているような気がする。いや本当に。今年度の水谷研のスローガンは不謹慎ながら敢えて『お祭りわっしょい!』にしたのも、そんな思いを学生のみんなに託しているからである。
そして今年度の僕の環境プロジェクト(イス環)の課題。『未曾有の出来事への遭遇。そして前に進むとき。僕たちはなにを思う。そんなときにこしかける椅子』。いみじくも渡邊浩幸先生が今年度で最後の指導となり7年の椅子をつくる授業に幕を下ろすことになる。ここにも震災の影響が見え隠れしながら、最後の椅子の課題としては重量感のある課題だったんじゃないだろうか。みんなにも何かを考えるきっかけとなってもらえれば本当に幸いである。
小説家の村上春樹氏がカタルーニャ国際賞を受賞した際のスピーチで、今回の震災のことについて触れ、我々は「非現実的な夢想家」でなくてはならないとコメントしている。「人はいつか死んで、消えていきます。しかしhumanityは残りいつまでも受け継がれていくものです。我々はまず、その力を信じるものでなくてはなりません」、と。
さて、最後に無理やりつなげてしまうが、今年の卒業生は偶然1年の時に空間表現論の授業を担当し、その時にU2のヴィデオを流して言ったことが、良く似ている、、、のである。そして2年後の空造4の課題は『U2のいえ』。そこにそこはかとないデジャヴュがある。U2の90年代最高の代表作『One』のテーマは、愛と人生と支えあうこと、である(と僕は解釈している)。
歌詞の一節はこうだ。“ひとつの 人生  でも同じじゃない  僕らは支えあう  お互いを  ひとつになって ”
「そして前に進むとき。僕たちはなにを思う。」そんなことを考えながら2012年に突入していく。お祭りわっしょい。