2019/11/28

歌舞伎町1/5世紀の聖戦

 とある会が新宿で開催され、その流れというか、勢いというか、急な思い立ちで、新宿歌舞伎町のライブハウスBLAZEへ。
 いつか観たいと思っていたユニットのライブだったのだが、予想をはるかに超えてすさまじかった。今回の演奏は結成20周年というタイミングで、「1/5世紀の聖戦(ミラーボール主義)」と銘打たれている。しかもこの規模の箱(ホール)で体感できるのは、充実感この上ない。そして場所は歌舞伎町。これ以上言うことはない。
 ライブは何と3時間ノントップで、会場のテンションはずっと上がりっぱなしだった。演奏の技術は完璧。おそらく会場にいた全員が、最高の多幸感に浸れたことだろう。
 かつては、Date course pentagon royal garden(デート・コース・ペンタゴン。ロイヤル・ガーデン)の名称だったユニット、主宰は鬼才菊地成孔、その名もDC/PRG(TM)

2019/11/14

トロールの森2019

杉並区の善福寺公園で開催されている屋外アート展『トロールの森2019』に作品を出展しています。
http://www.trollsinthepark.com/

 作品名は「Come Talk To Me」。公園内に出現した公衆電話とちゃぶ台の黒電話、といった感じの作品です。非常に明快なメッセージですが、最早世の中では見かけなくなった風景を作り出し、いろいろな思いを体感をしていただける品になっていますので、是非、お近くにお越しの際はご来場ください。


 会期は2019/11/3から23日まで開催しています。入場無料ですので、お気軽にどうぞ。
 まちなかプロジェクトへの参加する企画『未確認生物との交信/行進』もしています。変な宇宙人が街中に出没します。毎週日曜祝日に出現しますので、そちらもお楽しみください。(TM)

2019/11/07

クイーンの家

武蔵野大学3年生の後期、設計演習(授業名:設計製図4の第1課題の講評会を開催。この授業は、僕を含め5名の建築家の先生と一緒に運営する、スタジオ制の設計演習。水谷スタジオでは例年、第1課題ではスーパースター(ロック・アーティスト)の家シリーズの課題を提示する。もうこれも15年目(!)に突入。非常にコンセプチャルな課題で、学生にとっては非常に難しいと思うけど、頭をグルングルンさせ普段とはまったくちがう脳味噌の使い方をして思い切り頑張って欲しい、と例年思っている。今年度は昨年の大ブームもあったということで、超メジャーバンド「クイーン」を投下。個人的にはクイーンはこの課題に出さないつもりだったが(決して嫌いなバンドではありません。念のため。ただロック史上における位置取りが非常に微妙なので敢えて敬遠していた、ということです。はい。)、これだけ社会的に話題になったらいくしかないだろう、という感じ。意外、というか、当たり前のように学生世代の人たちにとっては、全く未知の存在のようで(これだけ映画がヒットしたというのに)、いささかズッコケ気味で授業に臨む。約3週間の短いスパンだが、履修者4名(今年度は設計演習の履修者の数が異例のm少なさ!)が課題に取り組み、44様のそれぞれ面白い提案が完成した。
 基本的に正解(らしきものも含む)がない課題なので、学生も困惑するが、講評する教員もいつもと違う所に頭をもっていかなければいけないので、講評会はいろいろな先生方の意見が聞けて、こちらとしても面白い。さまざまな技術や技能がどんどん展開していくこの世の中なのだが、最後は手描きのスケッチや絵が、まあまあパワーを持つということを今年も感じさせられて(もちろん、これは良いと思っている訳だけど)こういうのも大切だよね、と、完全に自己満足(及び、自己弁護(!))しながら講評も無事に終了。
 さて、課題全文を下記に流します。講評会の翌週は恒例の第1課題の打ち上げ&第2課題決起会@吉祥寺の歓楽街。学生諸君には第2課題も健闘を期待します。(TM)

■課題:「Queen のいえ」
 「スーパースターの家」シリーズの第15弾の課題は、ロック史上において世界中で絶大な人気を誇るロック・バンド、「クイーン」である。2018年に公開された映画『ボヘミアン・ラプソディ』[1]が日本国内を含め、全世界で大ヒットしたのは記憶に新しい。
 やや私見ではあるが、クイーンの音楽のカテゴライズは難しい。クイーンがデビューしたのは1973年。一時期イギリスのロック(ポップ)ミュージック・シーン、特にハード・ロックはレッド・ツェッペリンのデビュー時と比較して低調とされていたが、ハード・ロック第2世代として出現してきた代表格がクイーンである[2]、というのが通説ではある。が、70年代初めからムーブメントを起こしていたグラム・ロックの括りに見なされている場合もみられる。デビューアルバム『戦慄の女王』は既存のハード・ロックの形式から脱し、今までにないような奇妙な、そして新しいヘヴィーさを纏ったスタイルを確立させた。その後、『クイーン(74)、『シアー・ハート・アタック』(74)、『オペラ座の夜』(75、「ボヘミアン・ラプソディ」収録)、『世界に捧ぐ』(77、「ウィー・ウィル・ロック・ユー」「ウィー・アー・ザ・チャンピオン」収録) 等立て続けに名盤をリリース。80年代に入っても『ザ・ゲーム』(80、ファンクの影響)、『ザ・ワークス』(84、原点回帰)等を発表し絶えず大きなセールスを獲得しながら一線で活躍し、独自の音楽性を展開していく。91年フレディ・マーキュリーが死去してからも、残りのメンバーとゲスト・ヴォーカルをフューチャー[3]したかたちで活動は断続的に続いている。2020年に来日コンサートも開催予定であり、そのブームは現在も継続していると言える。
音楽の特徴は、メロディのもつキャッチで緻密な美しさ、メンバーが奏でるコーラスのハーモニー、ギター音をダビングすることによりうみだすギター・オーケストレーションというヘヴィーで厚く多様な音質、特異なメロディパターンをもつリズム・パターン、等が挙げられる。技術的に非常に高いものを持っている各メンバー各自が、自分のサウンド・ポリシーを持ち全員が作曲し作風もそれぞれ異なるため、音楽のバリエーションの多様さが大きな魅力となっている。
もともとこの課題のオリジナルは『わがスーパースターのたちのいえ』[4]というコンペの課題である。今年度は、その『スーパースター』という像をどうとらえられるかということを、世界中で人気が認められるロックバンド、クイーンの存在を冠して考えてもらいたい。
課題へ取り組む糸口は、数多ある。クイーン自体のポピュラリティ、フレディ・マーキュリーのファッションなどを含めた先駆的なパフォーマンス、自ら楽器をつくるブライアン・メイの音への探求、ライブ・エイドのパフォーマンス、或いは『ボヘミアン・ラプソディ』の組曲性、ロック史が激動する70年代~80年代~現在という時代性、各々のメンバーや楽曲群、歌詞等など。
課題は、例年通りの前置になってしまうが、様々な社会性や文化性を持ったバンド(今も一応、現役)、クイーンという音楽グループの住まいを設計することではない。音楽という世界を通して創造をしているクイーンの拠り所としての概念(→空間)はどのようなかたちで表現することができるのか、時間や空間を超えた構想力豊かな提案を期待している。

[1] クイーンの結成から1985年のライブ・エイドでのライブ・パフォーマンスまでを描いた伝記映画。監督の後退などもあり映画批評家の前評判は分かれたが、主演のラミ・マレックはアカデミー賞主演男優賞を受賞するなど各賞を受賞する等一定の評価を受けた。
[2] エアロスミス、キッスと並び御三家との説がある。この後、ヴァン・ヘイレン、デフ・レパード、80年代のボン・ジョビへの流れ。
[3] ポール・ロジャース(20042009,アダム・ランパード(2012)を起用。単発のパフォーマンスでは、エルトン・ジョンやジョージ・マイケルの客演が有名。また、デヴィッド・ボウイと共作演をおこなった「アンダー・プレッシャー」(81)のヒットがある。
[4] 1975年の新建築の住宅設計競技の課題。『わがスーパースターのたちのいえ』。審査委員長は磯崎新。そしてその結果は。。。ほとんどが、海外の提案者が上位をしめた。磯崎はその審査評で「日本の建築教育の惨状を想う」というタイトルで、日本人提案のあまりの硬直化した状況を嘆いている。さらに相田武文が「犯されたい審査員を犯すこともできなかった応募者」という講評をおこなっている。今で言うところの「草食系」である日本人建築家の提案の惨状をみて「磯崎が新建築コンペにとどめを刺した」と評している。