2019/06/27

「ティーセレモニー」展

 先週で終わってしまったが、初台のオペラシティ・アートギャラリーで開催していた『トム・サックス ティーセレモニー』展を観に行く。というか、会期終了間際ギリギリ間に合った、という感じ。
 ド直球のワン・コンセプトの展示なのだが、非常にアイロニーとユーモアが爆裂している展示で、個人的にはハマってしまう。最近、こういう振り切った姿勢に触れると、安心感が生まれ、勇気づけられる。展示物を一通り見た後、映像作品をみるという順番で展示を巡ったので、展示物だけを見ただけでは分からない謎が解けていく、というその流れは良かったかもしれない。
 会場は意外と若い人たちが多くて、「まあまあ入館料も高いので、どうしようかなぁ。。。」と若干躊躇していた自分を少し反省。
 「洗練とはたゆまぬ純化と見直しである。(中略)すでにそこにあるものを発展させ、加えていく。もっとセックスを、もっとドラッグを、もっとヒップホップを-暗黙をあからさまにしながら。(中略)すべてにおいてその純粋さ、調和、静謐の感覚を維持しながら。」というパンフレットに掲載されている作家の言葉をかみしめ、大きく頷く。そして最後はこう締めくくられる。「茶道は死んだ。茶道は永遠なれ。」
言うまでもないが、「ロック⇒茶道」に置き換えられている。ロッケンロール。合掌。
(TM)

2019/06/24

「神話機械」展

  アーツ前橋(設計:水谷俊博建築設計事務所)で開催中の『やなぎみわ 神話機械』展へ、ゼミ生12名を引率して施設見学にうかがう。それにしても、展示のコンテンツが素晴らしくて静かな驚き。さすがに現代美術を代表するアーティストということもあり質&量とも見ごたえ充分。地下の一番大きなギャラリー(6)に展示されている、モバイル機械の演劇(?)的な展示は、本当に楽しめた。学生は若干ポカンとした雰囲気もあったが、それぞれに刺激を受けたようで、何かしら自身の卒業研究の糧にしてもらえればと思う。
 前橋の後、高崎方面へ移動して、群馬県立近代美術館(設計:磯崎新)をみる。比較するのはおこがましいが、展示室の構成やヴォリュームがまったく対極的な2つの美術館を体感できるので、この流れは良い、と勝手に納得。改修したばかりの隣接した県立歴史博物館(設計:大高正人、改修:日本設計)も観る。
 東京に戻り新宿で打上げ。前期も後半戦に差し掛かってきたので、学生の益々の奮起を期待するばかり。(TM)

2019/06/15

花のすがた

 この季節、例年と同じことをまた書くわけだが、桜が終わり、あっという間に5月が終わり、梅雨になってしまった。そうこうしているうちに、家の裏に勝手に群生している紫蘭が咲き誇り、たんぽぽが綿毛をフワフワととばし、家の玄関先のコンクリート土間を突き破ってドクダミが元気に咲きだした(が、ブログの更新が若干滞っている間に、今は既に花は散ろうとしている)。まったく世話してなく(なんと言っても雑草なので)、綺麗に(?)毎年花をつける様子をみて、素晴らしいと感慨に耽ってみる。こうやってまた毎年の光景が過ぎていく。
                                                                                                                (TM)




2019/06/05

設計演習最後の課題(2019):原美術館

 武蔵野大学の3年生の設計演習第1課題の講評会。今年度の履修学生数が多く、いい作品を期待していたが、いい作品のヴォリュームはほぼ例年通りという感じを受けた。非常に難易度の高い課題だが、振り切ろうと思えば振り切れるタイプの課題なので、例年数点、実現性を超えた面白い案が出てくる傾向がある。そう意味では今年度はリアリティ重視の傾向が見受けられ、無条件で面白い(或いは変なorカッ飛んだ)案はなかったのは少し残念。まあ、社会全体が横並びになってきている感はあるので、そんな時代に学生にいろいろと期待するのは酷なのかもしれない。が、やはり期待せざるを得ない。第2課題の爆発を願うばかり。
 さて、実はこの課題は最初につくってから15年目を迎える学内では史上最古の課題だった訳だが、教員(私)の都合と、原美術館も閉館が近づいているということもあって、今回が最後という運びになった。個人的には非常にいい課題だと思っているので、いろいろと(例えば1期生の時は、大変だったけど、学生の熱量が半端なく面白かったなぁ、、とか)思いだすこともあり感慨深い。原美術館への敬意も表しながら、課題全文を下記に記します。もうこの課題が、学内に流れることはない。(TM)

■課題:「次世代のミュージアムの設計」
 東京都心の小ミュージアムを素材として次世代の新しい美術館像の提案を今回の課題とする。計画地は品川区の原美術館。1938年建築の旧原邸を改装し、現代美術専門館として開館。海外の美術館と協力し秀作の展示を行っている日本では数少ない現代美術の専門美術館の草分け的存在である。この原美術館の改築ということを課題の目的としたい。
 前提としてこの美術館の現在存在する意味やあり方を建築のもつ歴史もふまえて十分に吟味してもらいたい。原美術館としての存在意義をどう捉えるかということを最初のステップにして計画の構築をしてもらいたい。
それをふまえて新しい美術館像のあり方を提案してもらいたい。計画においては、現存する美術館を保存するかたちでの提案も可能だし、まったくゼロにしてしまって新しい建築を計画することも可能である。また、既存の一部空間や機能を保存あるいは移築して計画することも可能である。
また建築の計画とともに、美術館のソフトについてもコンセプトを示してもらいたい。建築のハードとソフトは一体で存在するものである。美術館がどのようなものを発信(あるいは受信するのか)ということも提案してもらいたい。
計画においては周辺のまちや環境へどのように関わるかということへの提案は大前提である。ハード、ソフト、環境が一体となり社会へ発信していく、新しいかたちの美術館像の提案を期待している。