2019/06/05

設計演習最後の課題(2019):原美術館

 武蔵野大学の3年生の設計演習第1課題の講評会。今年度の履修学生数が多く、いい作品を期待していたが、いい作品のヴォリュームはほぼ例年通りという感じを受けた。非常に難易度の高い課題だが、振り切ろうと思えば振り切れるタイプの課題なので、例年数点、実現性を超えた面白い案が出てくる傾向がある。そう意味では今年度はリアリティ重視の傾向が見受けられ、無条件で面白い(或いは変なorカッ飛んだ)案はなかったのは少し残念。まあ、社会全体が横並びになってきている感はあるので、そんな時代に学生にいろいろと期待するのは酷なのかもしれない。が、やはり期待せざるを得ない。第2課題の爆発を願うばかり。
 さて、実はこの課題は最初につくってから15年目を迎える学内では史上最古の課題だった訳だが、教員(私)の都合と、原美術館も閉館が近づいているということもあって、今回が最後という運びになった。個人的には非常にいい課題だと思っているので、いろいろと(例えば1期生の時は、大変だったけど、学生の熱量が半端なく面白かったなぁ、、とか)思いだすこともあり感慨深い。原美術館への敬意も表しながら、課題全文を下記に記します。もうこの課題が、学内に流れることはない。(TM)

■課題:「次世代のミュージアムの設計」
 東京都心の小ミュージアムを素材として次世代の新しい美術館像の提案を今回の課題とする。計画地は品川区の原美術館。1938年建築の旧原邸を改装し、現代美術専門館として開館。海外の美術館と協力し秀作の展示を行っている日本では数少ない現代美術の専門美術館の草分け的存在である。この原美術館の改築ということを課題の目的としたい。
 前提としてこの美術館の現在存在する意味やあり方を建築のもつ歴史もふまえて十分に吟味してもらいたい。原美術館としての存在意義をどう捉えるかということを最初のステップにして計画の構築をしてもらいたい。
それをふまえて新しい美術館像のあり方を提案してもらいたい。計画においては、現存する美術館を保存するかたちでの提案も可能だし、まったくゼロにしてしまって新しい建築を計画することも可能である。また、既存の一部空間や機能を保存あるいは移築して計画することも可能である。
また建築の計画とともに、美術館のソフトについてもコンセプトを示してもらいたい。建築のハードとソフトは一体で存在するものである。美術館がどのようなものを発信(あるいは受信するのか)ということも提案してもらいたい。
計画においては周辺のまちや環境へどのように関わるかということへの提案は大前提である。ハード、ソフト、環境が一体となり社会へ発信していく、新しいかたちの美術館像の提案を期待している。