2021/06/29

セーフ・アズ・ミルク

  新型ウィルスの状況は変わらず。東京オリンピック開幕まで1月を切った。もう、余程の事態が発生しなければ、中止できないと思うので、何となく現実感がないままスタートするのだろう。どんな大事な事でも、はっきりしないまま、ズルズル止めれなくなってしまう状況が本当に実現するのだということが自明になり、真にそういうことはしないように、と、自らを戒めずにはいられない。後は、神頼みで、感染状況などが、ひどい状況にならないことを祈るばかりである。

 さて、話は変わり、オペラシティで『ストーリーはいつも不完全・・・』展が開催されていた。アーティストのライアン・ガンダーの展覧会が新型ウィルスの影響で開催できなくなったので、ライアン・ガンダーのキュレーションで収蔵作品展をおこなうという、いわば代打展(すみません、自作造語です)だったのだが、これがすごかった。展示を概念をひっくり返す試みで、本来展示室に設定されているべき照明がまったく無く、薄暗い展示室を、観覧者は小さなペンライトで作品を照らしながら、徘徊していくという、実験的な構成がとられていた。ライアン・ガンダーの「目に見える現実の世界でしか物事を考えなくなっているが、それだけではないはずです。(中略)現実の秩序を壊すことで、物事の根源に迫るひとつの筋道だと思っています。」(以上、ザックリした要約&抜粋)、という言葉を、体感できるのである。いや、世界は広い。

 さて、ここで、キャプテン・ビーフハート御大のお出ましである。キャプテン・ビーフハートといえば、名盤(奇盤?)『トラウト・マスク・レプリカ』があるのだが、ここは、ファーストの『Safe As Milk』(名義はキャプテン・ビーフハート&ヒズ・マジック・バンド)、で。

 サイケデリック・ロックの重要バンドと一般的にはいわれているのだが、このファーストは伝統的なブルースを基にしたアルバム。ただ、そのブルースへの解釈が非常に過激なため、非常にファンキーな傑作に仕上がっている。ここは、B面2曲目の「Abba Zaba」も捨てがたいが、A1曲目の「Sure ‘Nuff’ N Yes I Do」を。当時まだ無名だった、ライ・クーダーのギターが疾走し、ビーフハート隊長の世界観がほとばしる幕開けを告げる。最高である。

 さて、「現実の秩序を壊すことで、物事の根源に迫る筋道」を辿ってみたい。と、思いながら、何はともあれ、元気にまいりましょう。(TM)