2015/03/04

ダイナー

  この所、独りで長距離を移動することが多かったので、最近には珍しく本を読む時間がある程度確保できた。という訳でもないが、買ってからずっと本棚に置き去りにされていた、平山夢明著『ダイナー』(文庫本、500頁以上もある小説なのでなかなか手が伸びなかった)を一気に読了。ほんとに一気に読める小説も久しぶりの体験。
  作者自身が、「「読者に対してグゥの音も出ないほど徹底的に小説世界に引き刷り込み、窒息させるほど楽しませようとしている物語」を「徹底的にブン回しでやる」」(本書あとがきより)と述べているように、読んでいて目眩がするような体験ができる。もう、この歳になってくるとあまりモノに感じなくなってきているのだが(いい意味でも悪い意味でも)、小説の面白さをグイグイ感じさせられる大傑作である。
  内容自体が前衛的であったり、文体等の技巧が芸術的であったりする訳ではなく、あくまでもど真ん中のストレートで攻めて攻めて攻めまくる感じで、荒削りで骨太な文章が、理性的な表現(構成)により怒涛に連続している。この理性的なところが多分重要で、作家の福澤徹三が本書巻末に解説しているように、「理性的であるからこそ、常識から乖離した世界を活写できるのであって、主観に溺れては、ただグロテスクな表現だけで終わってしまう。」のである。そして何よりエンターテイメント感の塊である。
  こんな感じの建築がつくれたら、さぞかし面白いだろうなぁと感じてしまった。なかなか、建築ではこんな感じはだせないんだよなぁ。うむ。(TM)