2022/06/22

ちょっと想い出してみただけ

 ロック・バンドのスパークスのドキュメンタリー映画『スパークス・ブラザース』(ちなみに、この映画をみると、レオス・カラックス監督の映画『アネット』の本来の意味、というものがあぶり出され、『アネット』を観終わった後の変なモヤモヤ感が昇華していき、また、逆に『スパークス・ブラザース』に深みが出てくる、という妙な無限ループの円環構造をもっている、というのを最近気づいた次第)の映像をみていたら、ロック・バンドのフランツ・フェルディナンドが出てきて、そこで、(映画とは全く関係ないところで)何とも言えない妙な感じ、というか気分で、何かが引っかかっていた。何かをどこかで、ものすごく昔、見た感じなのだが、それが想い出せない、という状況である。最近、こんなことがよくある。

 で、こんなことは、ふとした事で思い出す、訳である。それは、フランツ・フェルディナンドだった。このバンド名は、第一次世界大戦のきっかけとなった「サラエボ事件」で暗殺された大公の名前からとっている(すっかり忘れていた訳だが)のだが(ちなみに、これはバンド的には、単に語呂が良いだけ、という理由だったと記憶している)、このフランツ・フェルディナンド大公にちなんだ、摩訶不思議な博物館が、建築家のハンス・ホラインによって提案されていた、という記憶だった。おぼつかない記憶によると、その不思議博物館には、考古学的な古墳があって、そこで来場者は埋蔵されたお宝を自由に掘り出すことができて、壊れた遺品が誤って鑑定されて展示ケースに並んでいる、という感じの設計(?提案のようなもの)だった。

 そこまでは想い出したのだが、細かい所までは想い出せない。ずっとモヤモヤしているのも何なので、ちょっと調べ始めたのだが、これが中々大変なことになった。まず、ハンス・ホライン関係の本がなかなか見つからない状況に若干静かな衝撃を受けながら、ネットでもこれといって情報にたどり着けない。あまりに時間の無駄な感じがしてきたのだが、乗りかかった船という感じでリサーチ(大したことはないのだが)を続け、古い建築雑誌で、やっとたどり着けた。ヤレヤレ。

 その、不思議博物館は、メンフェングラートバッハ市立美術館での展覧会(1970年(ワオ!小生の生まれた年だ))の展示作品で、フランツ・フェルディナンドをモチーフにしていた(しかもメイン・モチーフではなかった)のは、1972年のヴェネチア・ビエンナーレの展示だった。ということで、ニアミスであった。ただ、若干言い訳すると、この二つの展示は、非常にコンセプトが似ている(ように感じる)、のである。

 映画『ちょっと想い出してみただけ』(監督:松居大悟)が、映画監督のジム・ジャームッシュの作品『ナイト・オン・ザ・プラネット』にインスパイヤ―されてつくった、ミュージシャンの尾崎世界観がつくった楽曲を、モチーフにしてつくられた映画(と、これも相関関係の連鎖がありまくる訳だが)、ということもあり、映画館では何故かジム・ジャームッシュの総集編のようなパンフレットが販売されいる(ちなみに、これはちょっと前のはなし)。これがコンテンツとヴォリュームの両面から素晴らしく、思わずゲットせずにはいられない。

 さて、ジム・ジャームッシュのパンフをパラパラと眺めながら、ちょっと想い出してみた、だけで、「何か、ここのところ無駄に大変だったなぁ。別に何かを得た訳ではないんだけど。。。それにしても、摩訶不思議博物館はヤバいなぁ。。ハンス・ホラインは若干世間から忘れかけられている気配やけど。。。」と、独り言つ、今日この頃である。そして、また、『ナイト・オン・ザ・プラネット』をビデオで観ていた頃の30年くらい前を、ちょっと想い出してみるのである。うむ。合掌。(TM