2018/02/09

椅子の講評会2017(年度)


 例年そうだが、年度末なので様々な授業の講評会、発表会、審査会がおこなわれる。武蔵野大学で椅子をつくる授業をやっていて、その講評会を開催。今年度もゲスト講評者を招いての講評会を何とか無事に開催の運びに。木工作家の渡邊浩幸さん、映像ディレクターの土居京子さん、現代舞踏家の相原朋枝さん、写真家のキッチンミノルさんにお越し頂き、それぞれの多様な視点から講評を頂く。僕以外はみなさん建築とは違った分野の方々なので、その講評も個人的にはとても楽しい。
 今年度は履修者14名で、それぞれ特徴のあるデザインの椅子ができあがった。今回の講評会を進めながら漠然と感じたことは、課題に対する回答として、賛同側にまわるか、或いは批判的な立場をとる場合が多い訳だが、どちらにも立たない、という立ち位置もあり、それが面白い、ということである。
 昨年のこの会のコメントでも書いたような記憶があるが、作品が発する余白(のようなもの)というものの大切さを改めて感じさせられる。その作品の持つ余白(のようなもの)というものは、しっかりと作者がデザインの答えを持って初めて提示できる(逆に言うと、その答えを持ってないとダメということ)のであるが、プレゼンの仕方によっては、それは観る側や感じる側に委ねてしまえるやり方があるのだなぁ、と思った。そして、それがある強度を持ってできていると、作品自体の出来不出来はそれ程重要ではなくなってしまうのである。まあ、それが良いか悪いかは、ちょっと微妙なところなんだけどね。最後に個人的には、「課題の奥の意味(僕が考えているポイント)と、その課題に対するスタンスの在り方。」ということを総括で講評させてもらう。
 建築の設計も、ある程度は同様のことが言えるが、あまりデザインの裏を取りすぎてしまうとNG、という側面もあり、なかなか難しい。。。いやはや。
 終わった後は、履修学生全員を交えて30名程で三鷹の駅前で打ち上げ。1年の集大成ということで、学生は一様に充実感を漂わせてくれていて嬉しい。さて、次は2日後に卒業設計の審査会が控えている。怒涛の年度末が続いていくのです。はい。(TM)

「イスをつくる」
課題:「 作戦であり、謀略であり、計画であり、
    宗教であり、数学であり、建築であり、
    退行&進化、そして哲学を全て統合したステージで
    スマホを捨て、SNSを捨てた
    そんな時に座るイス」

【課題概要】
 「動画発信サービス「Ustream(ユーストリーム)」のブランドがサービス10年で消滅する」、という事態になった、というニュースが流れた(201746日の日本経済新聞の記事より)。ネットによる動画配信としては日本国内では「ニコニコ生サービス」と並んで知名度の高いサービスだ(った:あえて過去形に)が、サービス開始当初からパソコンでの視聴を想定していため、スマートフォン(スマホ)への対応が後手に回ったことが原因らしい。
 まさに、スマホの時代である。総務省の情報通信白書(平成27年度版)によると、スマホの世帯普及率は72.0%、20歳代のスマホによるインターネット利用率は何と91.3%という結果になっている。まさにスマホがないと生きていけなくなっているんじゃないだろうか、とさえ思わせる実情である。そして、SNS。もちろん便利なものだが、その中毒性もさまざまなに指摘されている(世間的にはまったく無視同然だが。。。)。タバコがガンの病因になり得るように、SNSは鬱病やパニック発作や病的な苛立ちの病因になり得る、と言われている事実もある。
 さて、そんな、今現在、スマホとSNSとどう向き合うか?(って若い世代には酷な設問、或いはバカな質問だ。)、或いは、投げ捨てた時どうなるのか?
 演劇家の寺山修司は、「書を捨てよ、町へ出よう」と謳った。さあ、みんな、「スマホ(とSNS)を捨てよ!」。何処へ出ようか?
 様々に考えを巡らしてみてください。魅力的なイスに出会えることを期待しています