2023/02/02

卒業設計2022(年度)

 先々週の話になってしまったが、武蔵野大学の卒業設計の公開審査会が開催された。今年はいよいよ新型ウィルスの影響へも配慮しながら、卒業設計の審査会は基本的に対面(オンラインも並行しながら)でおこなわれることに。

 今年個人的に一推しだったのは1/1で現物を設計・制作した作品だった。これはいわゆる通常のかたちの卒業設計作品で突出して引っかかるものがなかったから、ということが個人的には大きな要因の一つなのだが、実際できた作品の力強さを改めて感じた。

 作品自体は、瞑想空間のような、人が1人だけ入れるくらいの小さな建築作品なのだが、高さが一番高いところで3,200mmくらいあり、壁面の一部が伝統的な組子細工でデザインされた構成になっている。その組子の開口部から入ってくる自然光を空間の中で感じられる、というのが大きな一つの醍醐味となっている。

 基本的に制作モノは、「設計作品じゃない!」といった意見をもつ教員も一定数いて、なかなか評価が高くなることは無いのだが、予選をギリギリで通過したこの作品、ファイナル審査でジワリジワリと審査教員の評価を獲得して、最終投票の結果3位で優秀賞、ということとなった。個人的には、制作過程をずっと見てきたのだが、提出が近づいてきて、最後に3m余りの建築が建ちあがった時には静かな感動を覚えた。これを一人でつくり切ったのは本当に素晴らしいと思う。

 今年の作品の中で、AIプラットフォームを活用して自動的にできてしまう計画案を素材にした設計作品があった。いよいよ、こういう時代が来たか(本当に、人間が介在しなくても、論文も設計もできてしまう、という時代がすぐそこに来ている)、ということを改めて感じる。そんな時代だからこそ、実物の持つパワーは、やはり強い、のである。 (TM)