2010/11/05

In A Savanna

 11/3(水・祝)。10/29から学生と一緒に作品を出展していた東京デザイナーズウィークが終わった。今回の作品は「In A Savanna」というもの。デザイナーズウィーク事務局の課題設定が「絶滅危惧種」というもので、家具をつくる上では正直非常に難しいお題だったのではないだろうか。

作品は約6500本の赤松を一本一本植えていくことによりフィクションとしてのサバンナをつくりあげ、その中に佇む絶滅危惧種の生き物たちを表した9つの椅子作品(これもまたフィクションとしての)をちりばめた、いわばインスタレーションのような、ちょっとした空間体験ができるような、「場」をつくり出した(つもりです。はい。)。
 僕の思いとしては、ただ単に「絶滅危惧種を守ろう。」とか「温暖化反対!」とかいう直接的で啓蒙的なほとんど意味のないメッセージを発するのではなく、もっと、なんというか、不安定な中で生まれてくる感覚(絶滅危惧ということに対する)を、感じられる何かをつくれればなぁ、と思っていた。あまりうまく表現できないんだけど。
 そんな中、小説家の保坂和志さんのブログを拝見して、そこで保坂さんはデヴィッド・リンチの『インランドエンパイヤー』に関してコメントをしていたのだけど、その中のテキストで「現実とフィクションがどちらも円環を閉じない」という表現をしていた。その「どちらも円環を閉じていない」感じということに、とても共鳴できたので、そんな感覚に近づけたらという風に漠然と考えていた。
 それで結局、6500本の線材をつかった大きな椅子(なのか?と思わせる)作品をつくることになった。の、だが、実際制作を開始してみると、まあ、大変なのである。4年生から1年生まで総勢35名がとりかかったが、なにせ材料のヴォリュームがある。1年生は本当に何を自分がやってるのか分からなかっただろうな。
 そしていよいよ10/28に現場設置になったのだが、なんと、台風が接近のため嵐のような雨。平日で授業があるため4年生と一部の3年生しか現場に入れない。そんな状況で6500本の木を植えていく(フィクションとしての作業ですが)わけだから、本当に言葉では表せないハードなこととなった。朝の8時から始めて、結局終わったのが夜の8時。しかも嵐の中。作業が終わった学生たちは放心状態でした。お疲れさまでした。
 
 そして11/3の最終日を迎える。大会の最後、クロージングパーティで学校出展部門の審査発表もあるのである。まあ、言ってみればグラミー賞の授賞式みたい(まあ、僕たちにとっては、ということだけど)。審査の結果をその場で迎えるという機会もそんなにあることではないので、学生と一緒にやや緊張してしまう。ちょっと違うかもしれないけど、なんとなく高校野球の監督の気持ちが分かるような気がした。
 会は進んでいき、入選作品から順番に受賞がコールされていく。だけど。。。なかなか、名前が呼ばれない。。。入選作品の7大学の発表が終わった時には、「う~ん。」と、ちょっと正直あきらめた。そして最後にグランプリ(Grand Aword)の発表。
  司会者の「東京デザイナーズウィーク2010学校賞Grand Awordは、」。。。というコール。
  そして、一拍空く間。
  そして、「武蔵野大学です!」のコール。
  学生と一緒に両手を上に突き出す。
 いや、久しぶりに感動しました。受賞後は学生は泣いていて、それを見てさらに感動してしまった。まあ、学生のそんな涙は、僕にとってのご褒美ですね。とにかく、最高の結果に終わって一安心。学生も苦労したから、喜びもひとしおだっただろう。よかった。
 なんか本当に現実なのかフィクションか分からないような感じで会場を後にする。作品のコンセプトに自分ではまってしまった感じ。そんな神宮外苑前の6日間。外苑前の神は僕たちに微笑んだ。