2022/02/14

椅子の講評会2021(年度)

 例年そうだが、年度末なので様々な授業の講評会、発表会、審査会がおこなわれる。武蔵野大学で椅子をつくる授業をやっていて、その講評会を開催。オミクロンがなかなか落ち着かない状況だが、制限つきではあるが、今年度もゲスト講評者を招いての講評会を何とか無事に開催の運びに。木工作家の渡邊浩幸さん、映像ディレクターの土居京子さん、現代舞踏家の相原朋枝さんにお越し頂き、それぞれの多様な視点から講評を頂く。僕以外はみなさん建築とは違った分野の方々なので、その講評も個人的にはとても楽しい。

 今年度は履修者13名で、それぞれ特徴のあるデザインの椅子ができあがった。今回の講評会を進めながら漠然と感じたことは、プレゼンテーションの大切さである。あまりに当たり前のことなのだが。実際に制作をした本人が、自分の作品の本質や意味を捉えられていないと、あまり作品の良さが伝わらない、ということになってしまう。そして、その逆も然り、である。後、木工作家の渡邊さんが、この課題文から、自身の「みうらじゅん」論を展開され(ボブ・ディランの話からの展開な訳だが)、学生は、かなり“ポカン”として聞いていた。(まあ、そういう“ポカン”とする局面を体験するのも大切なんだよなぁ。)やはり、自分の作品への偏愛(?)の在り方なのだと思うのだが、それがデザインを考えていく上での醍醐味、ということがいえそうな気がする。

 例年であれば、終わった後は、履修学生全員を交えて盛大に打上会を開催する訳だが、今年はそれも叶わないため、なかなか完結した感が湧いてこないのも正直なところ。学生には充実感を持ってくれれば嬉しい限り。さて、怒涛の年度末が続いていくのです。はい。(TM)

 課題:

ミラーボールが煌めくなか
解放戦線に立ち続け
Play it ,Fucking Loud!」と叫ぶ
そんな時に座るイス」
 
【課題概要】
ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔が主宰するユニット、DC/PRGDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN)が、突如解散宣言をおこない、ラスト・ライブが開催された。そのライブ MC で観客に向かって菊地は言った。 「君らは、今いくつで、20 年前はいくつだった? この 20 年間で、解放されたかね?それとも拘束されたかね?」 

 NHK のラジオで小説家の高橋源一が、自身がMCを務める番組に、同じく小説家の宇佐見 りんをゲストに招いた放送で、ボブ・ディランの話が番組冒頭で紹介された。そこから想 起される 1966 5 17 日、イギリス、マンチェスターでのコンサート。ボブ・ディラン は、このイギリス国内のツアー中、全ての会場で、エレキギターとバンド編成の演奏での ぞんでいた。そのパフォーマンスに対して、怒涛のブーイングや観客の途中退場が、各地 でみられていた。マーティン・スコセッシ監督の映画、『No Direction Home(ノー・ディ レクション・ホーム)』のラストシーン。客席から「ユダ!」と叫ばれる中、『ライク・ア・ ローリング・ストーンズ』をプレイ。プレイする直前にディランが、バックを務めるロビ ー・ロバートソンを含めたバンドのメンバーにこの言葉を放つ。「Play it ,Fucking Loud (ガンガンにいこうぜ!(拙訳 by 水谷))」。何かへ立ち向かうということがどんなこと なのか、それはどのような決意でのぞまなければならないのか、ということを伝える寓意 的なシーンである。 

 さて、「この 20 年間で、解放されたかね?それとも拘束されたかね?」 様々に考えを巡らしてみてください。魅力的なイスに出会えることを期待しています。(水谷俊博)