2014/09/24

Pink Floyd の家


急に肌寒くなってきた。
そのせいか、自宅のベランダの木建具に、カマキリが卵を産みつけていった。
ささやかだけども、とても神秘的な感じがうまれている。



 いよいよ季節が変わり、大学も後期が始まった。
 また、各授業で課題を出していく訳だが、3年生最後の建築設計演習(授業名:空間造形4)もスタート。この授業は、僕を含め5名の建築家の先生と一緒に運営する、スタジオ制の設計演習。水谷スタジオでは例年、第1課題ではスーパースター(ロック・アーティスト)の家シリーズの課題を提示する。非常にコンセプチャルな課題で、学生にとっては非常に難しいと思うけど、頭をグニャグニャにさせて思い切り頑張って欲しい、と思う。実は今年度は授業がたち上がって10年目の節目を迎える訳で、本当は「ビートルズ」をいくつもりだったのだが、ポール来日に合わせて昨年使ってしまったため、かなり悩んだ挙句に、何と「ピンク・フロイド」をもってきた。この、エキセントリック感、というかマイナー感は、何となくらしいかな、と独りほくそ笑みながら納得している次第。はい。
 さて、課題文全文を下に流します。
 学生諸君には、素晴らしい作品提案を期待しています!(TM)

■「Pink Floyd のいえ」課題文
「スーパースターの家」シリーズの記念すべき第10弾、且つ、有明キャンパスでの最初の課題は、「ピンク・フロイド」である。一般的にはプログレッシブ・ロックにおける最強バンドの代表格として評価されており、芸術的な音楽づくりにおいて世界的に圧倒的な支持を得ている。今年10月に何と、ニュー・アルバム『Endless River』をリリースするというニュースが急遽世界を駆け巡り、まさにタイムリーなテーマであると言えるだろう。
 65年にイギリスでバンド結成。メンバーはシド・バレット(2006)、ロジャー・ウォーターズ、デイヴ・ギルモアと各時代にフロントマンを替えながら、最終的にはギルモア(g/vo),ニック・メイスン (ds),リチャード・ライト(key/vo)(2008)の編成をとっている。67年にサイケデリック・ロックの傑作と称される『The Piper at the Gates of Dawn(夜明けの口笛吹き)』でデビュー。その後、プログレへと音楽性を転換していき、『Atom Heart Mother(原子心母)(70),Meddle(おせっかい)(71),などを経て72年にモンスター・アルバム『The Dark Side of the Moon(狂気)』を発表。ロック史に残る名盤として君臨しギネス記録打ち建てた。その後,Wish You Were Here(炎)』(75),The Wall(79)等の大傑作群をうみだした。
 この課題を考える上で、スーパースターというテーマに関しては外せないが、決して王道ではないベクトルが働いてくる。プログレッシブ・ロックはロックがロックそのものを対象化し始めた最初の動きと言え、現在の音楽(ロック)の流れをシニカルに(或いは批判的に)捉えることができるある可能性を現在をも秘めている。60年代に吹き荒れたプロテストな流れと、次に待ち受ける超楽観的な80年代へブリッジをかける 70年代の社会批判性をどう捉えるかということも興味深い。そして、もともとこの課題のオリジナルは『わがスーパースターのたちのいえ』というコンペの課題である。今年度は、その『スーパースター』をどうとらえられるかということを、ロック史上最大の異端スーパースター、ピンク・フロイドの存在を冠して考えてもらいたい。   
 課題へ取り組む糸口は、数多ある。プログレという音楽、コンセプトアルバムとしての組曲性、舞台演奏の演出、バレットやウォーターズの狂気性、前衛映画への楽曲、サイケデリックやアンビバレント音楽との関係性、70年代という時代性、各々のメンバーや楽曲群、歌詞、等など。
課題「Pink Floydの家」は、例年通りの前置になってしまうが、様々な社会性や文化性を持った、伝説のバンド(今も現役)、ピンク・フロイドという音楽グループの住まいを設計することにとどまらない。音楽という世界を通して創造をしているピンク・フロイドの拠り所としての概念(→空間)はどのようなかたちで表現することができるのか、時間や空間を超えた構想力豊かな提案を期待している。             (水谷俊博)