2013/07/17

The Best Of Time:空間造形クロニクル

武蔵野大学の設計演習(空間造形3、3年生対象授業)の講評会。前期の総決算的なイベントである。あえて、イベントといっているのは、この講評会の場はある意味「お祭り」であり、「ハレの場」であるから、学生諸君にも(今までの設計作業の生みの苦しみを越えて)思う存分楽しんで欲しいと思っている。と、いう訳で例年学生には、発表に何らかの一工夫を考えてくるようにガイダンスをしている。7~8年前の学生はいろいろと積極的に仕掛けてきて、例えば、かぶりモノで攻めるとか、5人くらいで演劇風に発表するとか、意味もないのに野球のユニホーム&金属バット姿で喋るとか、留学生がわざと通訳付きの2ヶ国語発表をおこなうとか、まあ、良いか悪いかは置いといて、非常に活気のある講評会だった記憶がある。年々その傾向も下火になってきて、今の学生たちはあまり何もしなくなってきてしまった。でも、何人かはその努力をしようとしていて、やはりそのプレゼンは印象に残る。改めて、自分にも省みてプレゼンテーションのあり方の意味を考えさせられたなぁ。ただ機械的にしゃべっているだけだと、伝えたいこともなかなか伝わらないのかもしれないなぁ、と再認識してしまう。
そんなこんなで学生に発破をかけながらやっているが、学生に一方的にやらせるのも申し訳なく思い(まあ、そんなこと思う必要もないのだが。。)、僕たちもパフォーマンスを披露している。見本というにはクオリティはあまりに充足していないが、講評会始まりに一発、学生たちにブチかますのである。
何をかというと、これもベタベタで「コント」である。一緒に設計演習を運営していただいている、建築家の大塚聡さん。後、大学スタッフの手塚愛さんと3人でミニライブを披露。コントのテーマは「コンセプト」ということで、建築にはコンセプトがつきまとう訳だけど、本当にコンセプトというものは、建築にとって不可欠なものなのだろうか?というアンチテーゼ的なメッセージも裏に忍ばせている。。。とは、いえ、まあ、所詮、超D級コントなので偉そうなことは言えないんだけど。
そして、何やかんやと9年間も続いたこのコントも、大塚さんと思う所があり、今年度で最終公演にしようということになった。まさにラスト・ライブ。すべてには終わる時がある、ということをまた感じ入る。
学生の発表はそれなりに出来ている作品も数点あり、それなりに刺激的ではあった。でも、「それなりなんだよなぁ、何故なんだろう」と考え、やはり、発表する学生の情熱が感じられないという、非常に当たり前でプリミティブな思考に落ち着いてしまう。やっぱりそうなんだよな。それが少し(というか、あまりに)感じられない。ので、ひっかかりがなくてこちらとしては消化不良で終わってしまう。評価なんか気にせず、思い切り自分の思いをぶつけて欲しい。正解はないのだから。と、いつもと同じ感想をもってしまう。
セレクションした学生の発表が終わった後、発表チャレンジを受けて立つ(いわば敗者復活)機会を一緒に担当していただいている伊藤先生が学生に投げかけるが、希望者はゼロ。う~ん。その後、僕が2回目を投げかけるが、手を挙げる学生は再びなくズッこける。作品への愛がないのかなぁ。という寂莫感を持ちながら吉祥寺へ出て懇親会へ。
懇親会では学生は講評会とはうって変わって解放感に満たされながら、にぎやかに楽しんでいる。その元気を講評会にぶつければいいのに、、と思いながらも、学生の充実感を感じている姿を見ると、こっちもほほえましくなる。後期の設計演習もがんばってもらいたい。
家路につき、なぜかスティックスが猛烈に聴きたくなる。『The Best Of Time』。これはラブソングみたいだけど、9年間パフォーマンスにお付き合いいただいたミース大塚氏、無理やり引き込んでしまったザハ手塚氏、そして我が分身ライト水谷の3者に捧げたいと思う。ありがとうございました。(TM)