2017/07/31

卒業設計作品集

 雑誌『近代建築』の別冊で、昨年度の卒業設計作品特集号が発行され送られてくる。毎年恒例で刊行されており、全国の各大学の卒業設計作品が掲載(大学の推薦による)されている。
 武蔵野大学では最優秀作品を掲載する流れになっており、昨年度は水谷研11期生のミスズが見事最優秀、という訳で掲載されている。頁内に推薦者の言葉として、推薦文を寄稿している次第。関係者以外は(多分)読まないと思うので、以下に流します。と、言っているうちに今年度の前期は終わりかけてきているのである。時間の経過は本当に早い。(TM)

■推薦の言葉
“いつか死ぬ。いつか絶対死ぬ。死んだ後も名を残すなんて。欲のかきすぎだ。”は、ロック・バンド、真心ブラザースの代表作『人間はもう終わりだ』のサビの有名な一節だ。高橋美鈴さんのこの作品をみて、真心のこの曲をどうしても連想してしまった。敷地は近傍に広大に広がる住宅地を両サイドに睨みながら、小高くそびえるふたつの連なる丘陵地を選定している。この2つの丘を結ぶかたちで、森の中、道なき道をつくるように葬祭場を設計する提案である。設計の手法としては、大きさ6004,000mmのさまざまな大きさの立方体のヴォリューム(実はこのオブジェクトが墓標となっている)が散策道のように緩やかに蛇行しながら、ランダムに連続するというシンプルな設計手法で構成されている。全国の卒業設計で評価されがちな、キャッチーなコンセプト&ルックが目を引く表現の類の作品(それはそれで良いとは思うのだけど、、、)ではない。学内の審査会でも、立体ヴォリュームのスケール感や長大な地下空間の必要性等に関して議論が噴出(「大き過ぎる」、「要らない」、等)したが、「住宅地という『生』を背景として、人間に必ず訪れる時間(『死』)を絶えず(そして静かに)訴えかける場所はとても大切だ。」という本人自身の思いが力強く表現されているところが最終的に評価された。近年見られる、優等生的な“社会的正義をバックにした解決策型”の案にはめ込めずに、自分の目指すべき姿を実直に追及することの美しさが心を打つ作品だ。まさに「死んだ後も名を残すなんて、欲のかきすぎだ」、と訴えているかのように。合掌。
(水谷俊博/武蔵野大学)