2014/10/15

ザ・ウォールに想う


 バッファローズの今シーズンが終焉し、失意の真っ只中にありながら、ウンと気持ちを立て直して武蔵野大学の設計演習の第1課題の講評会に臨む。
 以前、ブログに記載した通り今年度の水谷スタジオの課題は『ピンク・フロイドの家』。スタジオの学生はそれぞれ悩み続けながら案を提出した。
 ①非常に抑制された環境の中から、垣間見える理想像のカタルシスを感じる場
 ②2つの狂気の狭間に存在することにより、狂気の中に芽生える優しさを客観的視座から感じられる場
 ③時間のずれを超リアリズムかつ楽観主義的に体感できる、非常に大きなズレのある場
 ④サイケデリックを通して、越えようとしながら越えられない人間性を体感する建築的装置
 と、提案は今年度もバラエティに富んで四者四様。
 この課題は正解と言うものがないので、そこが難しい訳だが、学生たちはそれぞれ自分の答えを見つけることが重要なので、しっかりと到達できてよかった。おつかれさまでした。
 この課題をみながら、改めてピンク・フロイドを聞きなおしてみたが(本当に、ちゃんと聴いたのは学生時代以来じゃなかろうか?)、『ウォール』の2枚組を聴きながら今更ながら新たな発見があった。どちらかと言えばこのアルバムは、反体制的なコンセプトが中心に置かれていて、イデオロギーか或いは、(ちょっと表現悪いけど)尾崎豊的な反逆のアイドルの像をコンセプチュアルかつ芸術的に描き切っている感じであり、まあ、それ以上でも以下でもない、と思いこんでいた(ピンク・フロイドは70年代までに限るぜ、的な思い込みです。はい、すみません。)訳だが、歌詞カードを良くみながら聴くと、人間の人生や生活や愛や家族等との問題とともに、誰でも持っているその裏側の心の闇的なものにとても深く触れているのでは、と思えてきた。逆に言うと、それ程壮大なテーマではなく、僕たちの普通の感覚に意外と近くにあるのではないか、と思えてきてしまった。これは僕が歳をとってきたからかもしれないが、ちょっと目から鱗状態になった。だから、この難解なアルバム(しかも2枚組だし)がすさまじく売れた訳やね、と妙に納得。僕個人的にも楽しませてもらった。
 学生諸君には後半の課題も楽しみにしている。
 人生は難しい。でも、だからこそ面白い。のである。(TM)

  追伸:毎年恒例の第1課題のスタジオ打ち上げを吉祥寺ハモニカ横丁にて敢行。後半の課題は、旧吉祥寺バウスシアター跡地がサイト。頑張りましょう。