2024/01/25

残像に口紅を

 年末、年始と、電車での移動が多かったので、積読状態の本を再び読みだす。

 筒井康隆著『残像に口紅を』を読了。文字が一つずつ世界から消えていく中で、どう言葉及び、物語を紡いでいくか?、という試練に実際に立ち向かう、というまさに実験小説。文字が消えて言葉として成立しないものは、そのもの自体や概念も消えていく、という設定なので、登場人物も、クールに容赦なく次々と消えていく、というところが何とも言えない感覚を読む側に与える。

 最後、20文字くらいになってくると、文体がまともな体裁ではなくなってくるが、文字数が少ない分、怒涛の文章構成になってくるところも面白い。それでも最後の1字がなくなるまで書き切る、という気迫に圧倒される。

 いや、すごいな。と思いながら、80年代後半に書かれたこのマイナーな本が普通に購入できるのは、SNSで話題になって、バズッたからだとのこと。最近、久しぶりに知り合いの方から連絡をいただき、「LINEをやっていない」と返信したら、いつも通りとても驚かれたことを、思い出す。SNSをやってなくても、恩恵に預かることができるので、いいではないか、と、また勝手に納得。いやはや。

 読書、と言えば、昨年から読んでいる、『街とその不確かな壁』(村上春樹著)は、読み終わるのが惜しくて、最終盤に差し掛かっているのだが、ちょっとずつ読み進めている。生活はバタバタだが、本はのんんびりと楽しみたいのであります。はい。(TM)