2014/05/22

森山邸をみる

 
  住宅の作品は奥が深い、というのが僕たち設計者も常日頃思うところ。  ここ10年くらいのスパンをみていて、西沢立衛さん設計の森山邸から住宅の設計は新しい局面を開けていないのではないか、というのが個人的な感想だし、通説でもあるだろう。
  大学の設計演習でも集住の課題を出しているので、例年、森山邸の話をしているが、実際に見ていなかったので、なかなか実感のある話が学生に向けてできないのを、なんとなくもどかしく思っていた。
 そんな中、知り合いの木村さんが、森山邸にお住まいなのを偶然知り、スタッフのharuと見学させていただく運びに。さらにオーナーの森山さんのご自宅も拝見させていただくことになった。ありがとうございます。
 いざ、実際の建築をみてみて、素晴らしさを改めて実感。雑誌でみていた情報だけだと、やはり限界があるなぁ、というのを改めて痛切に感じる。住宅の作品をみて、本当に久しぶりに圧倒的に、そして心地よい衝撃を受けた。
 ポイントはやはりスケール感。個人的にはA棟からガラスの渡り廊下を渡りB棟のキッチンへという空間の絶妙なスケール感に感動。本当にコンパクトな空間だが、決して狭さを感じさせない、全体のシークエンスの延長上にある感覚が心地いい。後は、平屋のG棟の屋上に上がり、敷地全体を見渡す感覚も気持ちいい。竣工して8年くらいが経過して庭の木々も育ってきているので、全体のランドスケープと各棟の配置の距離感が絶妙である。
 途中、大雨が降ってきたので、雨宿りをさせていただき、そのお陰で森山さんにもいろいろなお話を伺うことができた。何はともあれ、この建築が成立しているのは、オーナーの考え方やお人柄にある、ということを、再度猛烈に認識する。まさに、名建築に名クライアントあり、である。
 雨があがり、森山邸を後にすると、別世界から現実感を徐々に取り戻していく感覚がフツフツと沸いてきて、それもまた心地いい。いい建築は、そこに住む人を育てるんだなぁ、という感覚を改めて実感しつつ、僕も元気が沸いてきた。(TM)