例年そうなのだが、年度末なので様々な授業の講評会、発表会、審査会がおこなわれる。武蔵野大学で椅子をつくる授業をやっていて、その講評会を開催。今年度もゲスト講評者を招いての講評会を何とか無事に開催の運びとなる。木工作家の渡邊浩幸さん、映像ディレクターの土居京子さん、写真家のキッチンミノルさん、ファッションデザイナーの國時誠さんに参加頂き、それぞれの多様な視点から講評を頂く。僕以外はみなさん建築とは違った分野の方々なので、その講評も個人的にはとても楽しい。
今年度は履修学生のうち12名が講評会でプレゼン。力作ぞろいだったと思う。ゲスト・クリティークの講師の方々も、いい感じで講評いただいているように見受けたので、一安心といったところ。
例年、いろいろと学生が考えてくれるような課題の提示をしているが、今年度は長編小説を読み切ってから、課題に取り組む、ということにチャレンジ。学生は「ゲゲ~~っ!!」とう感じだった。そして、本当に、学生たちは本を読まない!、という事実を実感できた。4月に課題を提示するのだが、11月になっても読み切っていた学生は、ごくわずかだった(!)。ので、自ずと作品制作にとりかかるタイミングが、例年より大幅に遅くなった。そんな状況を横目でみながら、正直、この課題の出し方は失敗だった、、、と感じたのだが、この授業の醍醐味は、じっくりと考えて愚直に制作していく、ということであり、そういう姿勢で臨まないと、作品における本質的なパワーは生まれないような気がする。それがデザインを考えていく上でとても大切なことだと思う。当たり前のはなしなのだが、効率ばかり目指していては、底が浅くて、たかが知れているのである。学生諸君には、そこに気づいて、殻を破って欲しいと思っている(これ、昨年度も同じようなことを書いた記憶が。。。)。ただ、採取成果としては、よかったので、「まあ、これはこれでアリか。。」と自分で納得。
さて、次年度以降は、更に期待するばかりである。しっかりと頑張った学生には充実感を持ってくれれば嬉しい限り。さて、怒涛の年度末が続いていくのです。はい。(TM)
課題:「 街と,その不確かな壁 それを,通り抜ける,イス
」
【課題概要】
今年度の課題は大変だ。なぜなら長編小説(しかもかなり長めの)を、読まなければいけないからだ。
作家、村上春樹氏著の『街と、その不確かな壁』が昨年刊行された。
この小説は、ある意味、約 40 年前に書かれた名作『世界の終わりと ハードボイルド・ワンダーランド』の続編(パラレルな別編?!)と言っていい作品であり、村上春樹の集大成的な作品と言えると思う。
いずれにせよ、“不確かな壁”が物語の重要なポイントとなってくると思われる。
この、『街と、その不確かな壁』を読み(できれば、『世界の終わりと ハードボイルド・ワンダーランド』も併せて読んで欲しい(どちらかと言うと、『世界の終わりと ハードボイルド・ワンダーランド』→『街と、その不確かな壁』の順番で読むことをお奨めします)。)、この不確かな壁を通り抜けることをモチーフにイスを提案してください。
斬新で、メッセージ性のある、魅力的な作品を期待しています。
(水谷俊博)