2020/02/20

バッハ×建築inルツェルン(スイス)

バッハ×建築「J.S.バッハの家」の日本初上演は神戸(兵庫県立美術館)でしたが、実はその直前の2月6日が世界初上演でした。場所はスイス・ルツェルンです。ルツェルンは、ピアニストの加藤哲子さんが現在住んでいる都市で、「J.S.バッハの家」のために素晴らしい会場ノイバード(neubad)を用意してくださいました。
 元市民プールだった施設を文化施設として活用しているノイバードで、タイル張りのプールの底にピアノを置く(もちろん水は抜かれています)という、考えるだけでもわくわくする楽しそうな空間です。実際、背景の巨大スクリーンに映し出される映像が、私が考えていた以上に素晴らしく演出されて見え、正直なところ、私も度肝を抜かれました。
 客席はというと、もともとプールの底が階段状に作られている部分を利用していて、そこにビニールシートをかけただけの、決して座り心地の良い客席ではないのですが、会場は満員御礼。多くの来場者からこのバッハと建築のコラボを楽しんだと感想をいただきました。それも、この会場でできたからこそ、と、建築の楽しさを身をもって感じています。
 この「J.S.バッハの家」の家は、実際にはまだ建っていませんが、今のところは、どこへでも運んでいけるポータブルな家です。というわけで、またどこかで「J.S.バッハの家」にご招待することがあるかもしれません。その時は、是非加藤さんの素晴らしい演奏をゆっくり楽しんでいただけたらと思います。


撮影:アルトゥール・ヘベリ
Arthur Häberli, Fotographie

2020/02/19

バッハ×建築in神戸

 バッハ×建築~ゴールドベルク変奏曲「J.S.バッハの家」の神戸公演では、多くのお客様にご来場いただき、無事に作品をお届けすることができました。
 実は、当日の開演を迎える直前まで、思いもよらないハプニング(加藤さんの帰国便が1日遅れ、さらに荷物が届かず、ドレスが当日の朝やっと届いた!など)があったり、想定していた通りに運ばないことがあったりして、舞台裏は慌ただしかったのですが、「始まったら、最後まで走るよ。」と加藤さんと確認して臨んだ本番は、最後まで絶妙なコンビネーションで息をぴったり合わせることができました。今は、やり切ったという達成感があるとともに、演奏中のクォードリベットの盛り上がりを経て最後のアリアへ向かうあたりから、もうこれで終わってしまう(しまった)という寂しさがこみあげてきて、今に至っても少々複雑な心境です。
 音楽と建築の関係性を問う試みに興味はあるけれども敬遠していた私を、思いがけず誘い込んでくれた加藤哲子さんと、こうして一つのことを成し遂げられたことにただただ感慨を覚えています。
 哲子ちゃん、本当にありがとう。そして、スイスから全力でサポートしてくれたルエディこと、ルドルフ・ベック、心から感謝しています。
 私たちの作品制作は、多くの方に支援していただきました。ここにその方々を紹介して謝意を表します。
ペーター・キュヒラー(ドイツ語訳)
ワルター・キュヒラー(ドイツ語訳・建築)
渕上朋子(水谷俊博建築設計事務所)
浅川竜成(武蔵野大学大学院)
井上遼(武蔵野大学) (敬称略)
 最後に、パートナーの水谷俊博には心配をかけたかもしれないけれど、時折り1~2個のアドバイスを言葉少なにポツンというだけで、あとは好きなようにさせてくれたこと、これが効果絶大でありがたかったです。子供たちには私の緊張が伝わって心配をかけたようで申し訳なかったけれども、母さんが少々苦しみながらも最高に楽しんでいた姿を見てくれていたらいいなあと思っています。

2020/02/18

『霧と山と鉄と』展

 東京の西方面に所用があり、そのついで(と言ってはかなり回り道したが)に、府中市美術館で開催中の、『霧と山と鉄と-青木野枝ー』展を観に行く。
 個人的には越後妻有トリエンナーレで、まさに大地の中で作品に触れる機会があったが、展示室(美術館)内での展示をみるのはじめて。
 基本的にサイトスペシフィックな作品制作をしているアーティストなので、作品は会場のヴォリュームやかたちにあわせて、制作され展示されている。ほとんどが、1展示室に1作品という展示空間構成をとっているので、観る側からすると非常にシンプルな(いい意味で言っています、もちろん。)清々しさを感じ、心地よい。改めてこれらの作品群を眺めてみると、作品の内部に入り込めるものはなく、その点は建築との違いだなぁ、と思う。その距離感が、ある種の抽象性をんでいるような気がして、個人的にはその雰囲気から、作品自体の大きさ≒力強さを感じることができていて、こちらも元気が湧いてくる。という、感じがするのでありました。(TM)

2020/02/17

研究室引継ぎ会

 年度末ということもありさまざまな事柄がまとめに入っている。
 4年生は卒業間近になってきた。
 来年度水谷研に配属のメンバーを交え、14期生、15期生の引継会を吉祥寺にて開催。1学年しか違わないので、さすがに知らない顔はいないと思うが、じっくり話したことない学生同士の関係もあり、我ながら本当にいい機会だと思う。今年度(14期生)ゼミのスローガンが『魔法を見るには、魔法を信じなければならない Do The Right Thing! 』だった。魔法の一端くらいは見ることができたことを祈るばかり。それぞれの学生たちの次年度の活躍(卒業生は社会人ですね)を期待する限りである。(TM)





2020/02/11

椅子の講評会2019(年度)

 例年そうだが、年度末なので様々な授業の講評会、発表会、審査会がおこなわれる。武蔵野大学で椅子をつくる授業をやっていて、その講評会を開催。今年度もゲスト講評者を招いての講評会を何とか無事に開催の運びに。木工作家の渡邊浩幸さん、映像ディレクターの土居京子さん、現代舞踏家の相原朋枝さん、ファッションデザイナーの國時誠さんにお越し頂き、それぞれの多様な視点から講評を頂く。僕以外はみなさん建築とは違った分野の方々なので、その講評も個人的にはとても楽しい。
 今年度は履修者18名で、それぞれ特徴のあるデザインの椅子ができあがった。今回の講評会を進めながら漠然と感じたことは、作品自体に力があって、プレゼン(魅せ方、話し方、など)のパフォーマンスがしっかりとしていると、作品の良さが確実に伝わる、というあまりに当たり前のことが当たり前すぎて、それが面白い、ということであった。
 つい最近のトピックで、ビリー・アイリッシュがグラミーを独占した訳だが、そのビリー・アイリッシュの何がすごいのか?本当にザックリりいというと、自身のPRDIYの徹底的な姿勢がすごい(もちろん楽曲も素晴らしいが)、ということを総括で講評させてもらう。
 建築の設計も、ある程度は同様のことが言えるが、建築の場合はそこまでやりすぎてしまうとNG、という側面もあり、なかなか難しい。。。いやはや。
 終わった後は、履修学生全員を交えて30名程で三鷹の店で打ち上げ。1年の集大成ということで、学生は一様に充実感を漂わせてくれていて嬉しい。さて、怒涛の年度末が続いていくのです。はい。(TM)


課題:「 レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが流れ
    僕たちは罵れないのかもしれない、と思いながら
    怒りに任せて罵っていいとき
    そんな時に座るイス」

【課題概要】

 91回(米国)アカデミー賞(2019年)において、最高の栄誉である作品賞を『グリーンブック』(監督:ピーター・ファレリー)が受賞した訳だが、受賞が発表された瞬間、同じく作品賞に『ブラック・クランズマン』でノミネートされていた映画監督のスパイク・リーが会場を退場しようとした(結局、会場スタッフに静止され席に戻る)一幕(AP通信記事による)が、ひと時話題になった。ここで面白いのは、両作品とも人種差別(黒人と白人の)を題材として扱った映画というイメージがあるが、その実、作品内で描かれているコンテンツやクオリティは、ある意味まったく正反対(ここは少し微妙なところはあるが、まあ言い切ってしまって多分支障ないだろう。。。)なものとなっている。
 この点において、最も重要なファクターは、“怒り”ということである。菊地成孔氏が、ある映画レビューサイトでこの『グリーンブック』を以下のように批評している。「つくりもんの定番品、その新しいやつで、安心して泣いた。合衆国民以外の特権だ。」
 そして、スパイク・リーとバリー・ジェンキンス(『ビール・ストリートの恋人たち』監督)、ジョーダン・ピール(『ゲット・アウト』監督)に向けて、という体裁で以下のように結んでいる。「お前らは『グリーンブック』の受賞について、クソだらけに罵って良い。俺たちは罵れない。泣いてるし。ちなみにタイトルは悪い。象徴的でもないし気も利いていない。」と。
 これは例えば、のはなしである。『グリーンブック』やスパイク・リーや、課題タイトル冒頭のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(やトム・モレロ)もあくまでも一例だ(レイジの替わりにピストルズでも、クラッシュでも、リンキン・パークでも、JBでも、あなたの好きな対象に置き換えてもらっても差支えはない)。
 “怒らない世代”(あなた達)が怒る(或いは主張するでも良い)時、どうするのか?
 様々に考えを巡らしてみてください。魅力的なイスに出会えることを期待しています。                     (水谷俊博)

2020/02/03

バッハ×建築~ゴールドベルク変奏曲

来たる2月15日、兵庫県立美術館(神戸)にて、美術館の調べ「バッハ×建築」というイベントを開催します。
スイス在住のピアニスト加藤哲子さんが演奏するJ.S.バッハの『ゴールドベルク変奏曲』と、私たち水谷俊博・水谷玲子が同曲から想起する建築デザインとのコラボレーションです。ピアニストの加藤哲子さんとは幼なじみで、数年前に彼女が東京・両国で開いた演奏会で30年ぶりぐらいに再会しました。その時「いつか一緒に」と声をかけてもらったことに端を発する構想が、こうしてご覧いただけることになりました。加藤哲子さんはピアニストとして精力的に活動をされているのはもちろん、ヨーロッパ各地を回って活動する傍ら、建築にも関心を広げて音楽と建築との相性の良さを感じ取り、このプロジェクトのきっかけとなった提案をしてくれました。緻密に、巧みに、ユーモア豊かに構成される『ゴールドベルク変奏曲』を、演奏と並行して建築デザインでも表現し、お楽しみいただけたらと思っています。
また、加藤哲子さんは、テノール歌手ラファエル・ファーブルとのリートデュオとしても、情緒豊かな歌曲を作ってこられた素晴らしいピアニストで、彼女の素敵な演奏とのコラボレーションを私たちも楽しみにしているところです。
是非、会場でライブ演奏をお楽しみください。
2月15日(土)14時~ 兵庫県立美術館(神戸) 
 
こちらのイントロダクションもどうぞご覧ください。