バッハ×建築「J.S.バッハの家」の日本初上演は神戸(兵庫県立美術館)でしたが、実はその直前の2月6日が世界初上演でした。場所はスイス・ルツェルンです。ルツェルンは、ピアニストの加藤哲子さんが現在住んでいる都市で、「J.S.バッハの家」のために素晴らしい会場ノイバード(neubad)を用意してくださいました。
元市民プールだった施設を文化施設として活用しているノイバードで、タイル張りのプールの底にピアノを置く(もちろん水は抜かれています)という、考えるだけでもわくわくする楽しそうな空間です。実際、背景の巨大スクリーンに映し出される映像が、私が考えていた以上に素晴らしく演出されて見え、正直なところ、私も度肝を抜かれました。
客席はというと、もともとプールの底が階段状に作られている部分を利用していて、そこにビニールシートをかけただけの、決して座り心地の良い客席ではないのですが、会場は満員御礼。多くの来場者からこのバッハと建築のコラボを楽しんだと感想をいただきました。それも、この会場でできたからこそ、と、建築の楽しさを身をもって感じています。
この「J.S.バッハの家」の家は、実際にはまだ建っていませんが、今のところは、どこへでも運んでいけるポータブルな家です。というわけで、またどこかで「J.S.バッハの家」にご招待することがあるかもしれません。その時は、是非加藤さんの素晴らしい演奏をゆっくり楽しんでいただけたらと思います。
撮影:アルトゥール・ヘベリ
Arthur Häberli, Fotographie