2025/03/07

MUレビュー2025

 少し遅ればせながら、UPになりますが、武蔵野大学の卒業設計の審査会を開催。

 昨年度から卒業設計の審査のやり方を大きく変えた(個人的には、かなり遅ればせながらの感があったが、数年提案し続けてきたことがやっと実現した次第)。一大変革と言ってもいいだろう。大学の学内審査とは別に建築設計界で活躍する建築家を審査員として招聘し、「武蔵野大学卒業設計レビュー MU Review 」と銘打った公開審査会を併せて開催する企画を発動している。今回が昨年度に引き続き2回目。ちなみに、今年度の審査員は大島芳彦(ブルースタジオ)、稲垣淳哉(Eureka)、アリソン理恵(ARA)、入江可子(アリイイリエアーキテクツ)という顔ぶれで、モデレーターを水谷が務めた訳である。

 昨年もそうだったのだが、個人的には、この準備があまりに大変で、ひっくり返りそうだった。その反面、学生の参加者が、わずか11名(!)という事実に愕然(昨年度は30名以上が参加したので、この状況は予想不可能で、かなり衝撃だった。。。)。

 ただ、その心配は他所に、審査会自体は盛り上がり、審査員の方々も熱心に審査いただき、一安心。まずは、無事に2年目を開催できた成果は大きいと思う(って、誰も褒めてくれないから、ここで静かに主張(笑))。今年度は、学生も含めて懇親会を開催できた(当事者の4年生よりも、3年生の参加の方が多かったのも面白かった)のが大きな成果で、審査員の方々も最後までお付き合いいただき、異常な盛り上がりをみせたのが非常にうれしい限りで。今後も引き続き、学内の卒業設計、設計演習(設計製図)が盛り上がって欲しい、ということと、学生の今度の糧となることを切に願うばかりである。(TM)

2025/03/06

公共のおにクル

 大阪は茨木にある、「茨木文化・子育て複合施設 おにクル」(設計:伊藤豊雄)を観に行く。関西方面でこういうかたちでの公共施設はなかった感想を持っていたので、施設の実際の様子を見てみたくなり訪問。いや、すごい人で賑わっていて驚いた!、というか少し感動した。まさに、公共空間のあるべき姿のひとつが出現している。

 施設は図書館機能を中核として、子育て支援機能や、中規模の劇場機能を内包する複合施設。個人的には、同建築家が設計した岐阜の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」を想起させられ、「ぎふメディアコスモス」が平面的に広がった建築だとすると、この「おにクル」は、それを縦に積んだかたちで、市民が集う施設ができあがっている。ので、階数が多くなるため、人々を施設に誘(いざな)うにはハードルが高くなっている。だが、とにかく、利用者に使い倒されている感が満載で、例えば、共用廊下が少し広く確保されていて、そこにテーブルと椅子があれば中高生がたむろして勉強したり話したりしている光景が広がっている。まさに、パブリックな場と言えるのではないだろうか。いや、素晴らしい。

 地方都市周辺の市街地域も、人口減少などの影響で、元気がなくなってきている状況はどこでもみられる(多分、茨木も同じだろう)。大抵は画一的に開発(ある意味商業的に)をおこなうことで、よく分からない状況になっているのが実情だ(これ、あくまでも個人的な見解です)。その状況に対してどう処方するかを考えることは、建築家に求められていると思う。大きなヒントがここにある。(TM)

2025/03/05

設計演習講評(2024)

 既に昨年の話なのだが、授業の写真を整理していたら、武蔵野大学3年後期の設計演習(授業名、「設計製図4」)の写真がでてきたので少し振り返る(かなりタイミング遅くなってしまいすみません!)。

 武蔵野大学3年生、設計演習2024年度最終課題の講評会。武蔵野大学は4年生に設計演習の授業がないので、これが授業としてはラストの設計課題となり、後は卒業設計を残すのみとなる。

 3年生後期は僕も含めて5名の建築家(小池啓介(Thirdparty)、御手洗龍、アリソン理恵(ARA)、瀬戸健似(+NEW OFFICE)の各氏と、私め水谷)によるスタジオ制(各建築家により異なる課題を出して、少人数のスタジオのようなかたちでおこなわれる設計演習)での設計演習のかたちをとっており、他のスタジオの課題が見られるのはこの講評会だけなので、教員としても楽しみである。昨年度のこの授業の履修者が15名しかいないという前代未聞の状況だったのだが、今年度は40名ちょっとの履修があり、盛り上がりを取り戻したので、本当に良かった。

 水谷スタジオの2024年度課題は(ここ数年とそれ程変化なく)『武蔵野市現代美術館』。敷地はかつてバウスシアターが存在していたサイト。水谷スタジオの今年度の履修者7名も課題に奮闘した。

・アーティスト工房の新たなあり方に着目して、創作活動自体も魅せる美術館

・敷地全体を特徴的なジグザグの壁で構成し動線空間を軸に、展示空間を結ぶ美術館

・屋根レベルに大きなオープンスペースを設け断面的につながる美術館

・小さな諸室を敷地全体に分散配置にして、それらを路地上上の空間で巡っていく美術館

・レベル差が多様な展示空間を回遊動線を辿りながら、断面的にも関係づけた美術館

・展示エリアと共用部をパラレルに配し、相互をさまざまな開口でつなげる美術館

・ゆったりとR状を描く平面のプロムナードを中心にさまざまな機能がつながる美術館

と、いう具合にそれぞれに魅力的な提案を完成させた。

 講評会も、今年度は盛り上がったように感じる。やはり、履修者が多いと、お互いに学生も切磋琢磨し合うので、作品のクオリティが上がっていく。

 授業が終わった後、久しぶりに、学生も参加するかたちでの対面で懇親会も開催。いよいよコロナ前の状態に戻ってきたな!、と実感。

 さて、学生諸君には、この成果を是非、卒業設計につなげて欲しい。元気にいきましょう。 (TM)

2025/03/04

2期生の会

 水谷研の卒業生、2期生から声をかけてもらい、懇談の機会ができる。

 ナベ、ワタル、アサミ、が参加してくれた。なんでも、ワタルが出向でナベの勤め先に偶然赴任してきた(でも、もうすぐ戻るようだけど)、ということで、集まれる人で集まろうという感じになり、こっちにも声がかかったという次第。2期生のみなさん、ありがとうございます。

 この代が卒業して、17年が経過している、ということを考えると、時の流れの早さを感じる。彼等が在籍していたのは、まだ学科ができたばかりの時期で、確か共学になって初めての代なので、大学や学科もいろいろと変わってきた様子を話す。でも、そんな話をしながら、変化した事に、良いこともあれば、失ったこともあるな、と改めて感じる。まあ、とにかく、彼らの代は元気だった、のだ。時は移り、社会の状況も変わってきてしまっているのだが、何とか今の学生が元気が出るようにせねば!、と心に留めるのである。

 そうです。元気にいきましょう。(TM)

2025/03/03

ワーキングとブルー

 自宅のダイニング・スペースの横の小さな棚に、その時の気分でレコードを立てかけている。

 今回は、ワーキング・ウィークの『Working Nights』と、後、何となくElectric Light Orchestraの『アウト・オブ・ザ・ブルー』。

 ワーキング・ウィークはUKのジャズ・ダンス・バンドというカテゴリーで語られることが多い。ジャズ。ダンスとは何ぞや?(ジャズって、もともと踊る音楽ですよね?)と若干感じるところであるが、まあ、気にしないでいこう。このファーストは名盤。多分、ここからヒップホップへつながる(ほんの少しかもしれないが)一局面を担っていると思う。

 E.L.O.は多分これが一番の有名盤。やはり、C面最後の『Mr.Blue Sky』が最高の白眉だろうが、2枚組の超大作だが捨て曲無し。素晴らし過ぎ。元気にいきましょう。(TM)

2025/03/02

スクイズ・プレー

 長距離の移動が続いたので、読書も絶賛継続中。

 ポール・ベンジャミン著、『スクイズ・プレー』を読了。ポール・ベンジャミン? はて、誰でしょう?

 有名な話かもしれないが、実はこれ、作家ポール・オースターの別名で、『スクイズ・プレー』はオースターが売れる前に書いた、何と推理小説。しかも、ハードボイルドな作品である。

 そして、本作品で扱っている題材が、野球(MLBの元スター)ということで、全方位的に自分の大好物なのである。読んでいる間は、至福の時間帯でした。

 小説の最後は、この一節で終わる。

 「それが彼女を見た最後だった。」

 いや、もうね。カッコ良過ぎですね。

 こういう小説を読むと、いつも思ってしまう。「これからは、ハードボイルドでいくことにしよう!」。いや、無理なんですけどね。。。

 でも、「人間は、不可能なことに憧れる」とゲーテ先生も言っています。元気にいきましょう。(TM)

2025/03/01

椅子の講評2024(年度)

 例年そうなのだが、年度末なので様々な授業の講評会、発表会、審査会がおこなわれる。武蔵野大学で椅子をつくる授業をやっていて、その講評会を開催。今年度もゲスト講評者を招いての講評会を何とか無事に開催の運びとなる。木工作家の渡邊浩幸さん、映像ディレクターの土居京子さん、写真家のキッチンミノルさん、ファッションデザイナーの國時誠さんに参加頂き、それぞれの多様な視点から講評を頂く。僕以外はみなさん建築とは違った分野の方々なので、その講評も個人的にはとても楽しい。

 今年度は履修学生のうち12名が講評会でプレゼン。力作ぞろいだったと思う。ゲスト・クリティークの講師の方々も、いい感じで講評いただいているように見受けたので、一安心といったところ。

 例年、いろいろと学生が考えてくれるような課題の提示をしているが、今年度は長編小説を読み切ってから、課題に取り組む、ということにチャレンジ。学生は「ゲゲ~~っ!!」とう感じだった。そして、本当に、学生たちは本を読まない!、という事実を実感できた。4月に課題を提示するのだが、11月になっても読み切っていた学生は、ごくわずかだった(!)。ので、自ずと作品制作にとりかかるタイミングが、例年より大幅に遅くなった。そんな状況を横目でみながら、正直、この課題の出し方は失敗だった、、、と感じたのだが、この授業の醍醐味は、じっくりと考えて愚直に制作していく、ということであり、そういう姿勢で臨まないと、作品における本質的なパワーは生まれないような気がする。それがデザインを考えていく上でとても大切なことだと思う。当たり前のはなしなのだが、効率ばかり目指していては、底が浅くて、たかが知れているのである。学生諸君には、そこに気づいて、殻を破って欲しいと思っている(これ、昨年度も同じようなことを書いた記憶が。。。)。ただ、採取成果としては、よかったので、「まあ、これはこれでアリか。。」と自分で納得。

 さて、次年度以降は、更に期待するばかりである。しっかりと頑張った学生には充実感を持ってくれれば嬉しい限り。さて、怒涛の年度末が続いていくのです。はい。(TM)

 

課題:「 街と,その不確かな壁 それを,通り抜ける,イス 」

【課題概要】

今年度の課題は大変だ。なぜなら長編小説(しかもかなり長めの)を、読まなければいけないからだ。

作家、村上春樹氏著の『街と、その不確かな壁』が昨年刊行された。

この小説は、ある意味、約 40 年前に書かれた名作『世界の終わりと ハードボイルド・ワンダーランド』の続編(パラレルな別編?!)と言っていい作品であり、村上春樹の集大成的な作品と言えると思う。

いずれにせよ、“不確かな壁”が物語の重要なポイントとなってくると思われる。

この、『街と、その不確かな壁』を読み(できれば、『世界の終わりと ハードボイルド・ワンダーランド』も併せて読んで欲しい(どちらかと言うと、『世界の終わりと ハードボイルド・ワンダーランド』→『街と、その不確かな壁』の順番で読むことをお奨めします))、この不確かな壁を通り抜けることをモチーフにイスを提案してください。

斬新で、メッセージ性のある、魅力的な作品を期待しています。

                                                    (水谷俊博)