2024/05/23

その不確かな壁

 村上春樹著の『街とその不確かな壁』を読了。かなり時間をかけてしまった。全体が3章構成なのだが、2章を読み終えたあたり(3章が非常に短いので、物語はほとんどの部分が終わってしまっているあたり)から、「あ~、終わってしまう、、、」と思い、1日数ページで我慢したり、しばらく寝かせたりするなど、セルフ牛歩作戦(!)に出る試みをして、読み切るまでの時間を惜しんでいた。

 いや、正直、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を高校生の時にオンタイムだった身にとっては、この作品の持つ意味は、とても大きい。(念のため記すと、『街とその不確かな壁』は、ある意味、約 40 年前に書かれた『世界の終わりと ハードボイルド・ワンダーランド』の続編(パラレルな別編?!)と言っていい作品であり、村上春樹の集大成的な作品(と言えると思う)。)約40年の歳月を超えて、ということなので、こっちも40才とってるので、まあ、そう考えると、本当に、時の大切さを噛みしめざるを得ない。読み終わった後、若干呆然としてしまい、何故かWilcoの『ヤンキー・ホテル・フォックストロット』のアルバムを引っ張り出してきて聴きながら余韻に浸る。

 ということで(どういうことだ?)、今年度の大学でのイスをつくる授業の課題は、この『街とその不確かな壁』を読んで、デザイン&制作をおこなう課題とした。学生は、「ゲゲっ!!」というで感じではあったが、まあ、まずは頑張って普段は読まない(であろう)長編小説に取り組んでもらいたい。

 話しは変わり、最近、テレビ東京系で放送されているドラマ「滅相もない」にハマって、Tverで観ている。設定が、「突如、まちなかに大きな孔が出現して、それにまつわる云々、、、」な話(しかも1話読み切りのオムニバス形式)である訳なのだが、非常に舞台演劇的な演出が、超面白い。ふと、この孔に入る感覚が、村上春樹小説の、不確かな壁を通り抜ける感覚と、似ているのでは、と思ってしまう。まあ、他愛もない直感なのだが、いろいろなことヒョンなことからつながっていく、今日この頃です。はい。(TM)