歳をとってくると涙腺が弱くなってくる、とよく言われている。映画や野球の試合(だいたい贔屓の選手の引退に絡んでいる)を観ていて、「最近よく泣くようになったなぁ。。。」、と感じていたのだが、小説を読んで本当に久しぶりに泣いた。
『新しい時代への詩』(竹書房)。やはり著者のサラ・ピンスカーの素晴らしい仕事、ということになると思うが、海外小説なので、勝手ながら翻訳者の村山美雪氏にも感謝したい。音楽を扱いながら、その実近未来SF的な、少し変わった小説である。600ページくらいのヴォリュームのちょっとした大作なので(実際、読み切るのにかなり時間を要した)、なかなか読みづらいと思うが、まさに今現在の状況から展開されうる近い将来像(簡単にいうと、新型ウィルス、と、ヴァーチャルなネット社会、と、全体主義の閉塞した社会、かつ、その環境に慣れ切ってしまった近未来の人類)を的確に表現しながら(ちょっと話がずれるが、本作はまさにコロナ後の世界描写をしている感じを受けるが、出版はコロナ前だった、ということもあり、出版当初は予言の書として静かなブームが起こっていた模様)、その社会を、生の音楽で打ち破ろうとしていく人々の姿が、感動的なのである。
個人的には500ページあたりで、「I Fought The Law」(のカヴァーの演奏)が流れてくるシーンで最高潮に泣いた。
独裁的な指導者によって戦争がはじまっている今現在に、まさに読むべき作品。そして、元気を分かち合える作品だと思う。Let’s Rock Again. (TM)