鳩の撃退法
また、だが、音楽・映画に引き続き、この夏読んだ小説の話を少し。佐藤正午著の『鳩の撃退法』を改めて読み直す。この本はまず文章が上手い(自分はまったくの文学門外漢ですが、感覚で)ということと、ストーリーが面白い、という点は勿論だが、最大の魅力は、現実(リアル)と虚構(フィクション)の境界線が、読んでいると微妙に(というところが最大のミソなのだが)ズレてくる、というところだと思っている。それを小説というフィクションでやっている、というところが更に面白さを増している。これは、小説の醍醐味だと改めて感じさせられた。
これを読み返しながら、この春公開された、イ・チャンドン監督の映画『バーニング』を思い出す。これは村上春樹の小説(短編)『納屋を焼く』を原作としたものだが、劇中の主人公が小説家の卵という設定である。そして、この映画もこの小説がもつ、リアルとフィクションの境界線がポイントになっている映画だと感じている(映画自体がかなり解釈がオープンな(ある意味難解な)映画なので、これもまた一つの解釈だと感じてはいるが)。
そんなことを考えながら、なぜかウィリアム・ギブソンの『ニュー・ロマンサー』を読みたくなってきた今日この頃。(TM)