全体的には、建築的に攻めるか(空間の斬新さを追求)、建築外の方向から攻めるか(舞台設定やプログラム設定やプレゼンテーション手法の特異性、等を逆手にとるかたちで提案)で別れるところだが、これはどちらがいいということもないので、難しくもあり、面白くもある。普段は、建築の妥当性を念頭に置きながら、そっちの側はある程度外さずに考えているのが、頭の使い方をまったく違う方向に持っていかなければいけないので、実は講評する教員の側もかなり疲れる課題とも言える。でもこういう頭の使い方をすることも、大切なのだなぁと、毎年この時期になると思う。(思い切り自己弁護!)
さて、課題文全文を下に流します。
学生諸君には、第2課題も期待しています!(TM)
P.S.:
写真は第2課題の現地サーベイも兼ねた第1課題の打ち上げ
@吉祥寺いせや本店前でパシャリ。
■課題:「Duran
Duran のいえ」
「スーパースターの家」シリーズの第11弾の課題は、「デュラン・デュラン」である。一般的には80年代を代表する最強のアイドル(!)・バンドの代表格として評価されており、80年代前半から、ニュー・ウェーブを商業化することにより継承し展開するニューロマンティックというムーブメントの火付け役の主要バンドと位置づけられている。今年、ニュー・アルバム『Paper Gods』をリリースし37年目の現在も一線の現役バンドとして活躍を続けている。78年にイギリスでバンド結成。メンバーは時代により変遷を繰り返しながら、コアメンバーとして、ニック・ローズ(key)、サイモン・ル・ボン(vo)、ジョン・テイラー(b)、アンディ・テイラー(g)、ロジャー・テイラー(ds)(2006脱退)で構成されている。81年にシングル『プラネット・アース』でデビュー。その後、『グラビアの美少女』(81),『ハングリー・ライク・ザ・ウルフ』(82), 『ザ・リフレックス』(84)などのヒットを経て85年に映画007の主題歌『美しき獲物たち』で世界の頂点まで昇り詰める。85年にはメンバーが分離し「パワー・ステーション」「アーケイディア」という別バンド・プロジェクトを同時に立ち上げそれぞれがヒットを飛ばす。90年代から2000年代にかけて停滞期を経ながらも、ライブ映画『アンステージド』(2015)を鬼才デヴィッド・リンチ監督が手掛けたり、最新作では今尚、プロデュースにマーク・ロンソンやナイル・ロジャース等の超豪華な布陣を迎えている。雑誌『ロッキング・オン』の、「デュラン・デュランの真骨頂は、ロック・バンドでありながら(ニュー・オーダーやケミカルとは違った意味)でダンス・ミュージックの達人であり、一見チャラくも聴こえなくもないサウンドや歌やグルーブは、他のバンドには決してない個性とアクの強さを持っていて、確固たる「デュランらしさ」に貫かれている所」、というレビューはまさに的を得ていると言えるだろう。
この課題を考える上で、スーパースターというテーマに関しては外せないが、決して王道ではないベクトルが働いてくる。大きく外せないのは80年代という時代背景である。多彩な流れをうみ出しながらも、バブル期と重ね合わせられ評価されない時代の社会批判性をどう捉えるかということも興味深い。そして、もともとこの課題のオリジナルは『わがスーパースターのたちのいえ』というコンペの課題(1975年、審査委員長:磯崎新)である。今年度は、その『スーパースター』をどうとらえられるかということを、ロック史上良い意味では決して語られることのない、ポップ・アイドル(!)・アイコンとしてのスーパースター、デュラン・デュランの存在を冠して考えてもらいたい。
課題へ取り組む糸口は、数多ある。ニュー・ロマンティックという音楽、MTVの演出、ルボンやジョンのアイドル性やファッション、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれた音楽史上の現象、80年代という時代性、各々のメンバーや楽曲群、歌詞、等など。
課題は、例年通りの前置になってしまうが、様々な社会性や文化性を持った、ポップバンド(今も現役)、デュラン・デュランという音楽グループの住まいを設計することではない。音楽という世界を通して創造をしているデュラン・デュランの拠り所としての概念(→空間)はどのようなかたちで表現することができるのか、時間や空間を超えた構想力豊かな提案を期待している。