さて、話は変わり、オペラシティで『ストーリーはいつも不完全・・・』展が開催されていた。アーティストのライアン・ガンダーの展覧会が新型ウィルスの影響で開催できなくなったので、ライアン・ガンダーのキュレーションで収蔵作品展をおこなうという、いわば代打展(すみません、自作造語です)だったのだが、これがすごかった。展示を概念をひっくり返す試みで、本来展示室に設定されているべき照明がまったく無く、薄暗い展示室を、観覧者は小さなペンライトで作品を照らしながら、徘徊していくという、実験的な構成がとられていた。ライアン・ガンダーの「目に見える現実の世界でしか物事を考えなくなっているが、それだけではないはずです。(中略)現実の秩序を壊すことで、物事の根源に迫るひとつの筋道だと思っています。」(以上、ザックリした要約&抜粋)、という言葉を、体感できるのである。いや、世界は広い。
さて、ここで、キャプテン・ビーフハート御大のお出ましである。キャプテン・ビーフハートといえば、名盤(奇盤?)『トラウト・マスク・レプリカ』があるのだが、ここは、ファーストの『Safe As Milk』(名義はキャプテン・ビーフハート&ヒズ・マジック・バンド)、で。
サイケデリック・ロックの重要バンドと一般的にはいわれているのだが、このファーストは伝統的なブルースを基にしたアルバム。ただ、そのブルースへの解釈が非常に過激なため、非常にファンキーな傑作に仕上がっている。ここは、B面2曲目の「Abba Zaba」も捨てがたいが、A面1曲目の「Sure ‘Nuff’ N Yes I Do」を。当時まだ無名だった、ライ・クーダーのギターが疾走し、ビーフハート隊長の世界観がほとばしる幕開けを告げる。最高である。