季節外れということで、他は誰一人いない中で観覧。これは建築を見る上では(しかも公共施設では)、なかなか至福の体験である。展示施設としてはそれ程大きくない(延床で600㎡程度)が、逆に大き過ぎないのがいい、という建築空間の定石を見事に感じることができる。設計者自身はこの作品に関して、「個人の作品のための美術館では、建築は展示作品の前奏、伴奏の役割」(日本現代建築家シリーズ⑯(新建築社))と述べているが、この建築はまさに建築が主役としてある建築と言って過言でないと思う。池の存在(デザイン)がメインという作品コンセプトだが、細長い敷地に沿って、池を含めた全体の場所のシークエンスが各空間に沿ったストーリーを展開しながら文字通り連続していく様子は、なかなかしびれる。リニアに続きながらクローズエンドな建築は、通常限界がある場合が多いが、ワンウェイをただ戻るだけでも創造性を十分感じさせられる、ほんとに稀有な例じゃなかろうかと感動。
でも、こういう建築は現在では、あまり評価されなくなってしまっているというのも否めない。残念ながら。ちゃんとした建築をちゃんとつくる姿勢、というものを、改めて感じさせられる。建築はやはり奥が深い。 (TM)