2010/11/24

同時進行プロジェクト

 20日(土)、武蔵野大学の授業「基礎デザイン2」の一環で行う実測調査を、今年は思い切って自宅を題材に実施しました。何が大変といって、総勢60人を超える学生&スタッフが入れ替わり立ち替わり狭い住宅内で実測を行うという、想像するだけでも窮屈そうで運営が大変な授業。 実は調査とはいえ、どちらかというと目的は実測作業そのもので、眼前の空間を図面に描き起こすトレーニング。それと同時に、ひとつの住宅建築を体験してもらおうと思って設定した課題です。
 題材は手前みそでうちの事務所の設計作品を選んだのですが、学生にしてみれば 先生の自宅に行く→私生活を垣間見るドキドキ感 が先行していたみたいで、中には蔵書や写真アルバムのタイトルを熱心に見ていた学生も・・・・・。建築を見てくれたかなあとやや心配な一面もありましたが、どうだったんでしょう。
 質問や感想をくれた学生からは、実際にこの家に住む場面を想定して「こんなので大丈夫?」という心配が多かったように思います。こちらとしては「そこが魅力なんだけどなあ」と意外に思い、また、学生が和室には入らないでその手前から首を入れて覗き込むだけということが多かったことに驚きました。どうしてなんでしょう。他の場所ではえらく厚かましくしてた(ように見えました)のに、不思議なことです。
 合計4時間(準備と片付けを含めると5時間)にも及んだ授業は、おかげさまでほぼ全学生が出席して無事に終了。いやいや、自宅を授業の材料にするのは思った通りになかなか大変で、スタッフ&4年生の的確な運営と、家族の理解と協力(当日は隅っこに追いやってごめん)に感謝です。学生が少しでも建築の面白さを実体験してもらえたなら嬉しいです。

 その後。スタッフ、4年生、卒業生、私の家族が揃って、そのまま自宅で打ち上げたのですが(こういう時の自宅は便利)、途中からはサプライズで4年生の1人のお誕生日祝いになり、最後はバースデーケーキまで食べました。実は前日にお誕生日企画のことを聞かされて、飾り付けをするだの、ケーキを登場させる装置を開発しただのと、入念な準備があるのかと思えば、行き当たりばったりな部分もあって、授業の最中もコソコソ耳打ちしながら準備していたのでした。
 それにしてもお祭り好きなみなさん、うちに来るたびにお誕生日会してない?

2010/11/18

散歩とコーラとルビーの指輪

 武蔵野大学の授業「環境論演習」でのひとコマ。授業の中で『散歩ライブ』をおこなう課題を出したところ、なぜかこんなことに。

 これは、コ―ラにメントスというお菓子を入れたところ、水柱ならぬ「コーラ柱」が噴出しているところです。ちなみに1本がペプシでもう1本がダイエットコーク。口の穴の開け方を工夫すれば5mくらいの噴流を上げることも可能。。らしい。まあ、だからどうだってゆうの、って感じですが。
  そもそも課題の主旨は場所を読み解いて、その場を表現できることを何らかのかたちで(表現方法は全くの自由)パフォーマンスをおこなう、というもの。そんな主旨からは全くずれてしまっているが、まあ、面白いといえば面白い。僕は知らなかったけど、巷で話題になっているらしく、学生のひとりの実験したいという熱い思いが実現したもの。柱が出きったあとのコーラは炭酸が出きってしまい、ただの甘い黒い液体になってしまうところも若干気持ち悪い。おそるべしコーラ、おそるべしメントスである。
  でも、コーラ柱って何かに使えるのかな?とふと思う。舞台装置で水柱を上げたりするけど、コーラだからなぁ。コーラの柱をバックに唄を歌うとか。まあ、あまり気持ちがいいもんではないですね。唄うとすると『ルビーの指輪』あたりかな。ルビー色と茶色のコントラストが美しかったり、美しくなかったり。でも、最近の学生の世代は寺尾聰が唄ってのなんか知らないのだろうな。まあ、どちらにせよ、どうでもいい話ですみません。おしまい。

2010/11/05

In A Savanna

 11/3(水・祝)。10/29から学生と一緒に作品を出展していた東京デザイナーズウィークが終わった。今回の作品は「In A Savanna」というもの。デザイナーズウィーク事務局の課題設定が「絶滅危惧種」というもので、家具をつくる上では正直非常に難しいお題だったのではないだろうか。

作品は約6500本の赤松を一本一本植えていくことによりフィクションとしてのサバンナをつくりあげ、その中に佇む絶滅危惧種の生き物たちを表した9つの椅子作品(これもまたフィクションとしての)をちりばめた、いわばインスタレーションのような、ちょっとした空間体験ができるような、「場」をつくり出した(つもりです。はい。)。
 僕の思いとしては、ただ単に「絶滅危惧種を守ろう。」とか「温暖化反対!」とかいう直接的で啓蒙的なほとんど意味のないメッセージを発するのではなく、もっと、なんというか、不安定な中で生まれてくる感覚(絶滅危惧ということに対する)を、感じられる何かをつくれればなぁ、と思っていた。あまりうまく表現できないんだけど。
 そんな中、小説家の保坂和志さんのブログを拝見して、そこで保坂さんはデヴィッド・リンチの『インランドエンパイヤー』に関してコメントをしていたのだけど、その中のテキストで「現実とフィクションがどちらも円環を閉じない」という表現をしていた。その「どちらも円環を閉じていない」感じということに、とても共鳴できたので、そんな感覚に近づけたらという風に漠然と考えていた。
 それで結局、6500本の線材をつかった大きな椅子(なのか?と思わせる)作品をつくることになった。の、だが、実際制作を開始してみると、まあ、大変なのである。4年生から1年生まで総勢35名がとりかかったが、なにせ材料のヴォリュームがある。1年生は本当に何を自分がやってるのか分からなかっただろうな。
 そしていよいよ10/28に現場設置になったのだが、なんと、台風が接近のため嵐のような雨。平日で授業があるため4年生と一部の3年生しか現場に入れない。そんな状況で6500本の木を植えていく(フィクションとしての作業ですが)わけだから、本当に言葉では表せないハードなこととなった。朝の8時から始めて、結局終わったのが夜の8時。しかも嵐の中。作業が終わった学生たちは放心状態でした。お疲れさまでした。
 
 そして11/3の最終日を迎える。大会の最後、クロージングパーティで学校出展部門の審査発表もあるのである。まあ、言ってみればグラミー賞の授賞式みたい(まあ、僕たちにとっては、ということだけど)。審査の結果をその場で迎えるという機会もそんなにあることではないので、学生と一緒にやや緊張してしまう。ちょっと違うかもしれないけど、なんとなく高校野球の監督の気持ちが分かるような気がした。
 会は進んでいき、入選作品から順番に受賞がコールされていく。だけど。。。なかなか、名前が呼ばれない。。。入選作品の7大学の発表が終わった時には、「う~ん。」と、ちょっと正直あきらめた。そして最後にグランプリ(Grand Aword)の発表。
  司会者の「東京デザイナーズウィーク2010学校賞Grand Awordは、」。。。というコール。
  そして、一拍空く間。
  そして、「武蔵野大学です!」のコール。
  学生と一緒に両手を上に突き出す。
 いや、久しぶりに感動しました。受賞後は学生は泣いていて、それを見てさらに感動してしまった。まあ、学生のそんな涙は、僕にとってのご褒美ですね。とにかく、最高の結果に終わって一安心。学生も苦労したから、喜びもひとしおだっただろう。よかった。
 なんか本当に現実なのかフィクションか分からないような感じで会場を後にする。作品のコンセプトに自分ではまってしまった感じ。そんな神宮外苑前の6日間。外苑前の神は僕たちに微笑んだ。

2010/11/04

手描きのススメ。

 10月28日(木)=昨日の木枯らしの後、台風接近中という極寒雨天。こんなおかしな天候は勘弁してほしい・・・・・と嘆きながらも万全の寒さ対策を講じて外出、武蔵野大学能楽資料センター主催の狂言鑑賞会へ。なんと山本東次郎家による狂言4曲に無料ご招待いただくという幸運が降ってきまして。しかも座席は、演者の額から流れおちる汗の一粒一粒がはっきり見えるぐらいに舞台に近い場所というではありませんか。
 演目は、止動方角、月見座頭、文蔵、乳切木。4曲それぞれに異なった趣があって、その場面・情景が人物の動き・会話と最小限の小道具だけで上手に表現されているのはみごとでした。「余計な説明がなくてシンプルでよい!」、そのためかストーリーがかなりストレートに伝わってくるように感じました。面白い場面では私も思わず声に出して笑うし、やれやれ困ったことになったなという場面になれば私も思案顔に。観賞中の1時間とちょっとの間にいろんな気持ちの間を行き来して、心の体操をした気分です。

 さて、今までは前置き。この日その後の出来事で驚くべきことがありました。
中学・高校で非常勤講師をされている先生と雑談中のこと、「板書をノートに書き写さず、携帯で写メ撮ってる生徒がいます。だから、私(先生)も撮影させまいと説明が終わったことからどんどん消していくんです。それでもノートをとらない人が多いです・・・。」って。え~~~~。いや、すべての学校・生徒がそうではないと思いますが、あ~、なんだか言葉ないです。
 写メ撮っている生徒、そのデータをパソコンに保存してスクラップか何かでノート作成してるんでしょうか。それならちょっと見直すけれども、きっとしてないだろうな~。自分の手で書くと時間がかかるかもしれないし、字が丁寧に書けないと見栄えもよくないかもしれない。けれども、自分で書けばその間に内容を咀嚼して、自分自身のアウトプットとして(より役立つ内容として)書きとめることができる(=後から有用)のです。このことを身をもって経験したら、それからはもう自分で書かないで済ますことができなくなるはず。
 ですので、1年生のみなさん、自分の手でしっかり書いてください。授業中の極わずかな板書ぐらい、デジカメで撮らずにメモを取りましょう。本当に。

 余談。初めて行く場所への道順は、事前に地図で確認すると思いますが、試しにその地図を頭に入れて、記憶だけに頼って白紙に自分で描いてみてください。すっかり描ければ、きっと途中で迷わずに目的地に着けます。描けなければ描けるまでトライ。ということを私の身内の者が実践していました。これも先の話と同じです。・・・・が、そういったところで、今はカーナビ、GPSの時代。。。。あまり説得力がないのかもしれませんが、人生どこかで役に立つはず。